CL決勝でドイツ勢が示したサッカーの新たなトレンド (2ページ目)

  • 福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro
  • photo by Akagi Shinji

 直線的にゴールを目指すスタイルということだが、パスの本数が少ないこともそれをよく表している。実際、ドルトムントは4チーム中パスの本数が一番少ない。

 注目すべきはフンメルスとスボティッチ、CBふたりのパス成功率の「低さ」だ。このレベルのチームであれば、普通、CBのパス成功率は80%以上だが、ドルトムントのふたりのCBは80%を下回る。なぜ低いのかというと、このふたりは横パスが少なく、縦へのダイレクトプレイを狙っているからで、このデータからも、ドルトムントが常に縦に速い攻撃を狙っていることがわかる。

 ただし、ドルトムントのDFラインが浅かった(高かった)ので、何回か裏をとられて、バイエルンに攻め込まれるシーンもあった。その決定機を防いでいたGKバイデンフェラーの活躍も見逃せない。今回の決勝は、両GKのレベルが非常に高いので、しまった展開になったともいえる。

 ともに決定機が多かったが、そこをきっちりセーブしたノイヤー、バイデンフェラーの貢献度は相当高い。サイズ、フィジカル、スピード、セービング技術、足もとのテクニック、メンタルの強さとあらゆる点で高いレベルにある。とくにバイデンフェラーの決定機阻止率は、ベスト4のチームのGKでトップ。ドルトムントが勝つためには彼の活躍が必須だろうと試合前に考えていたが、これから先、世界トップのサッカーでは彼のようなGKが求められるのだろうと感じた。

 また、両チームともにFWの献身的な守備が目についた。コンパクトなサッカーを実現するためには絶対に前線の運動量が必要になるが、この試合でもドルトムントのレバンドフスキの運動量が非常に多く、それはバイエルンのマンジュキッチについても同様で、FWの守備への貢献度が高かった。

 運動量という部分では、ドルトムントだけでなくバイエルンも非常に豊富で攻守の切り替えが早い。攻守両面で全員がハードワークをする。同時に、バイエルンは誰かひとりかふたりをおさえれば止められるチームではない。

 バイエルンのリーグ戦の総得点は98だが、トップスコアラーは15点のマンジュキッチ。次がミュラーの13点。つまり、得点者が集中しておらず、どこからでも点をとれるチームということであり、チームとしての完成度の高さがうかがえる。一方、ドルトムントは、レバンドフスキ(24点)とロイス(14点)が総得点81の約半分を叩き出している。これが両チームの違いのひとつといえるだろう。

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