ホッフェンハイム退団。宇佐美貴史が期待に応えられなかった理由 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo

 第11節まで先発で使われ続けた宇佐美が第12節で外れた際には、指揮官に直接理由を聞きに行くほど、スムーズな関係性ができていた。 だが12月に入ると、成績不審からバベル監督が更迭される。暫定監督となったクラマー氏が指揮した2試合は2連敗。宇佐美には出番がなかった。

 後半戦のあたまから指揮をとるようになったクルツ監督の在任中は出場機会も多く、9試合中6試合に先発、1試合に途中出場した。だが、第27節にギズドル監督が就任してからは一切試合に関わらなくなった。

 宇佐美が活躍できなかった理由の一つには、指揮官がころころ代わったという不運もあるだろう。そのたびに戦術や選手の起用方針が少なからず変わる。クラマー監督とギズドル監督は明らかに宇佐美を起用する気がなかった。何か大きなプレイ上の理由があるというよりも、絶対に使わねばならない選手だと思わせることができなかったということだ。

 もう一つはコミュニケーションの問題である。実際には宇佐美のドイツ語にそう大きな問題があったわけではないのだが、「言葉ができないから使われない」と、キッカー誌などに書かれた。本人は「まわりが心配したと思う」と言う程度で、さほど気にも止めていなかったが、少なくともメディアの目にはコミュニケーション不足であると映ったということだ。

 選手によっては言葉など大してできなくても、戦術理解をし、コミュニケーションがとれる場合もある。だがおそらく宇佐美の場合はそうではないから、キッカー誌のような記事が生まれたのだ。自分を理解する先輩がいるわけではなく、バイエルンのような好選手がそろうわけでもない。そんなチームでどう自分をアピールしていくかは、言葉を超えた問題だったのではないか。

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