リーガで苦戦。CLで敗北。でもレアルはなぜ儲かっているのか? (3ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by AFLO

 それだけではない。ペレスはその一方で、クラブの重要な資産であるスタジアムの再開発にも力を注いだのである。まず、スタジアム東側の拡張工事を行ない、VIPゾーン、ボックスシート、バー、レストランなどをリニューアルし、国内最大のサッカーショップやクラブオフィスを設置。サンチャゴ・ベルナベウは、世界一のクラブに相応しいスタジアムへと変貌を遂げたのだ。

 これは、かつてマンチャスター・ユナイテッドが行なった手法に似ているが、建設業界出身のペレスだけに、自治体との用途変更交渉をスムーズに進められた点も大きかった。しかも、ボックスシート販売をはじめ、会議用にレストランを開放するなど、ビジネスチャンスが多い首都マドリードの立地を最大限に生かしたことも、売り上げを伸ばす要因となった。

 周知の通り、その後、銀河系軍団がピッチ上で結果を残せなくなり、ペレスはその責任を取る格好で2006年に職を追われることとなった。しかし、この第1次ペレス政権下において、スポンサー収入、テレビ放送権収入、スタジアム収入、マーチャンダイジング収入など、すべての部門が急成長を遂げ、クラブの体質が大きく変わった事実に間違いはない。そして改革の第2フェーズは、ペレスが会長に再就任した2009年にスタートしている。このシーズン、ペレスはクリスティアーノ・ロナウド、カカという2大スターを一気に獲得して再び世界の注目を浴びると、2010年にはインテルを率いて欧州の頂点に立ったばかりの名将ジョゼ・モウリーニョを招聘。再びスター軍団を作り上げ、ピッチ上ではリーガタイトルを奪還することに成功した。

 また現在、ペレスはピッチ外の戦略も同時進行で行なっている。2011年、新たなスタジアム再開発構想を明らかにしたペレスは、2億ユーロ(約255億2200万円)を投じてショッピングセンターの拡大やスタジアムに直接アクセスできるホテルの建設などを発表。さらに昨年3月には、アラブ首長国連邦に建設予定の「レアル・マドリー・リゾート」建設のプレゼンも行なった。2015年に完成予定のこの施設は、すでにアブダビでオープンしているフェラーリ社の「フェラーリ・ワールド」同様、レアル・マドリードのテーマパークとなるという。

 今回、フォーブスの長者番付で2位に陥落したマンチェスター・ユナイテッドが、昨年から42%増の収益を上げたのに対し、一気に76%増という数字を記録したことでついに世界一の座に躍り出た『白い巨人』レアル・マドリード。フォーブスのランキングは、過去の取引、市場価値、債務、スタジアムといった多くの要素からクラブの資産価値を算出している。そのことを踏まえれば、ペレスの手腕と経営手法が世界一と認定されたと言っても過言ではないだろう。しかも、レアル・マドリードは来シーズンから新たにエミレーツ航空と5年の胸スポンサー契約を結び、年間2200万ユーロ(約28億1000万円)という大金が懐(ふところ)に入ってくることも決まっている。不況知らずのひとり勝ちとは、まさに現在のペレス会長と、レアル・マドリードのことを指しているのではないだろうか。

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