【CL】レアル、バルサ敗退の真相。欧州勢力地図は変わったのか? (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSU FOTOGRAFIA

 ところがほどなくすると、その「冷戦構造」は崩壊へと向かった。守備的サッカー陣営が消滅の道を歩んだからだ。その結果、世の中の価値観は、攻撃的サッカー陣営になびくことになった。リーダーはスペインで、05~06シーズン、バルサが2度目の欧州一の座に輝くと、その傾向は決定的になった。

 以降、バルサとスペインサッカーは、攻撃的サッカーの旗手として君臨する。08~09、10~11シーズン、バルサがチャンピオンズリーグで優勝を飾れば、スペイン代表もユーロ2008、2010年南アフリカW杯、ユーロ2012を立て続けに制し、その存在感を見せつけることになった。一時期、イングランド(プレミアリーグ)に奪われていた、UEFAカントリーランキング(リーグランキング)1位の座も奪回。この世界の強者として君臨していた。

 強者ではあったが、悪役ではなかった。かつて強かった頃のドイツはその逆だった。破壊する力で勝るチームだった。カウンターで勝利した00~01シーズンのバイエルンは、まさにそうした意味での強者、悪役になる。

 それから12年。ドイツはすっかりキャラを変えた。かつての価値観に照らせばバイエルンとドルトムントは悪役になる。実際、両者の決勝対決を喜ばない人は少なからずいる。固定観念にとらわれ、かつてのイメージでモノを語ろうとする人はそうだ。

 だが、ドルトムントもバイエルンも、準決勝第2戦のアウェー戦で、守りを固めようとしただろうか。守備的な布陣を採用しただろうか。

 レアル・マドリード戦の前半、ドルトムントのドイツ代表選手、ロイスが中盤をするするとテクニカルなドリブルで駆け上がり、チャンスを拡大させたシーンがあった。そこで、こちらの目に止まったのは、レアル・マドリード側の反応だった。やられたという顔で、その巧みなドリブルを傍観していたのだ。「巧い選手は巧い相手に弱い」を、見せられたシーンだった。

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