【CL】躍進するドイツ勢。秘密はピッチ外の戦略にあり?

  • 鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi
  • photo by AFLO

 クラブは公共のものであり、その運営・経営は地域のために奉仕され、地域に根差したものでなければならない。クラブ文化の成熟したドイツでは、そういう伝統が受け継がれている。そして、そのブンデスリーガ全体に底流する経営理念と、10年以上前からドイツサッカー連盟が推し進めてきた選手育成改革が融合したことで、ドルトムントやバイエルンの復権が実ったのである。人件費に過剰な投資をせず、地道な経営と育成を続けてきた結果が、今シーズンのCLで躍進できた秘訣だろう。

 バイエルンのカール・ハインツ・ルンメニゲ会長は語る。

「クラブのスローガン『MIA SAN MIA(我々は、我々だ)』という言葉に、バイエルンの姿が映し出されている。FCバイエルンは、大きな家族なんだ。利益を最大限生み出すということだけに躍起になってはいけない。私たちが目を向けるべきは、支えてくれる人々なのだから」

 今シーズン、圧倒的強さでリーグ制覇を果たしたバイエルンでは、来季からジョゼップ・グアルディオラが指揮を執る。ドイツの名門の「クラブは家族である」という哲学と、揺るぎなき育成ビジョンが、1年間の休養をとっていた名将の心を動かしたのは、想像に難くない。報酬面だけなら、マンチェスター・Cやチェルシーのオファーのほうが魅力的だったはずだ。だがグアルディオラは、未来あるブンデスリーガ王者を選んだ。

「数年後には、欧州リーグの勢力図が変わっていても不思議ではない」と語るのは、かつてバイエルンからオファーを受けた経験もあるベンゲルだ。バイエルンとドルトムントを中心に、ドイツ勢が今後のサッカー界を席巻していくのか――。間もなく行なわれるCL準決勝(4月23日@バイエルン対バルセロナ/4月24日@ドルトムント対レアル・マドリード)は、来季以降のサッカー勢力図を占う重要な一戦でもある。

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