CL準決勝でスペイン2強と激突。ドイツ勢の勢いはどこまで続く?

  • 了戒美子●文 text Ryokai Yoshiko
  • photo by GettyImages

 08年以降のドルトムントは、若く将来性のある選手を安価で獲得、売却する方法が上手くいった。例えば香川真司は、35万ユーロ(約4000万円)でセレッソ大阪から買い取り、ビルト紙によれば1600万ユーロの移籍金でマンチェスター・ユナイテッドへ移った。また11年夏にレアル・マドリードへ移籍したヌリ・シャヒン(現在はレンタルで戻ってきている)の移籍金は1000万ユーロ。広州へ移籍したバリオスの移籍金は850万ユーロと言われる。

 一方で獲得する選手となると、これまであまりビッグネームの名前はあがってこなかった。今季、ドイツ代表のロイスを1750万ユーロで獲得したのはむしろ異例のことだった。そのロイスはシーズンを通してエース級の活躍をしており、CL準々決勝のマラガ戦でも得点をあげている。獲得直後にクロップはその移籍金を「安かった」と語っていたが、期待通りの結果を出している。

 若い選手を多く獲得したクロップが進めたのは、運動量を求める躍動的なサッカーだ。前線からのハイプレスで相手を追い込み、素早く攻撃に転じる。このスタイルを一貫していることと、選手の入れ替わりがあまりないことがドルトムントの強みになっている。昨季と今季を比べると、香川の代わりにロイスが入ったくらいのもので、主力はほとんど変わらない。スタイルが浸透しきっているのはこのためだ。

 クロップの求心力も見逃せない。ドイツではクロップと選手たちの関係を指して「父親のよう」と言われる。得点の際の激しいガッツポーズに喜ばない選手はいないはずだし、昨季優勝を決めたゲームで香川を抱き上げたシーンなど、まさに父親のようだった。

 試合後の記者会見では的確な冗談で記者の心を掴む。少し長い記者会見になれば「僕からも質問があります。帰ってもいいかな?」などと笑いを取りながらその場をすりぬける。3対2と劇的な逆転勝利をあげたマラガ戦の後は「心臓発作が起きるかも。医者に見てもらった方がいい」とコメント、爆笑を誘っていた。練習場で一番長くサインを求める列ができるのは、選手ではなくてクロップだ。

 準決勝に進出した4チームを見ると、やはり唯一経験不足なのがドルトムントだろう。だが準々決勝の勝ち方を見ても、最も勢いを持っているのがドルトムントでもある。下馬評ではスペインの2強に分があるようだが、何が起きてもおかしくない。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る