【イングランド】W杯予選で格下とドロー。「信頼」なきスリーライオンズ (2ページ目)

  • 鈴木英寿●文 text by Suzuki Hidetoshi
  • photo by Getty Images

 試合前、モンテネグロ・ポドゴリツァのスタジアムは、地元ファンの異様な雰囲気に包まれ、モンテネグロファン同士の乱闘騒ぎが客席で発生。キックオフ後もロールペーパーが次々とピッチに投げ込まれるなど(ハートの首に巻きついた場面もあった)、劣悪なピッチ、圧迫感のあるコンパクトなスタジアムならではの、独特な興奮が漂っていた。

 しかし、イングランドはアウェーの雰囲気に飲まれることなく、前半、相手を圧倒する出来栄えを見せた。開始早々から相手陣内へと迫り、3分にはルーニーが相手GKのスキを見定め、遠目の位置からループシュート。これは惜しくもポストを直撃するものの、その直後、ジェラードのCKをルーニーが豪快にヘディングシュート。わずか開始6分で、イングランドは先制に成功したのである。

 一方、守備面でもイングランドは、モンテネグロの攻撃にしっかりと応対した。主砲ブチニッチを完全に押さえ込み、相手のドリブル突破も散発に終わらせる。スモーリングとレスコットが統率する守備の壁は、モンテネグロのボールを次々と跳ね返していった。

 ところが後半、様子はガラッと豹変する。イングランドは途端に息切れしてしまったのだ。

 モンテネグロの波状攻撃が、イングランドのゴールを何度も襲い掛かった。59分、CKのクリアボールをブチニッチにペナルティエリア内でボレーされ、64分にはカウンターを許し、2対3の数的劣勢の危機にも直面。さらに72分、74分と強烈なシュートを打たれるなど、前半、輝きを見せたイングランド守備陣は、崩壊寸前まで追い込まれた。

 そして75分、ついにその壁は決壊する。またもモンテネグロにゴールラインまで迫られ、懸命にそれを阻むも、最後はゴール前のこぼれ球を押し込まれて失点。モンテネグロサポーターは同点ゴールに興奮し、ピッチに立ちこめた発煙筒の煙がイングランドの表情をさらに曇らせた。

 主将ジェラードは、こう反省する。

「前半は支配し、2点目を奪いに行ったがその後、パスがつながらなくなった。そして後半は相手にやられてしまい、同点弾を許してしまった......」

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