【ブラジル】イタリアとドロー。W杯開催国を優勝候補に押せない理由 (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 後半17分、4-2-3-1の3の右を担当していたオスカルに替えてカカを投入すると、事態はいっそう悪くなった。カカはオスカルのように開かず、トップ下に君臨。エース然と構えてしまったため、左右のバランスは悪化。前半活躍したダニエウ・アウベスも、サイドに協力者を得られなくなり、存在感を低下させていった。

 さらに、ブラジルの布陣は、メンバー交替を繰り返すうちにかつてのような4-2-2-2に変化した。決勝ゴールを狙おうと焦れば焦るほど、攻撃は中央を無理矢理こじ開けようとする強引な手法に陥った。

 83分、イタリアはエル・シャラウィがサイドから切れ込み、ポスト右脇に惜しいシュートを放った。この頃になるとブラジルのサッカーは、守る人と攻める人にグループがハッキリ分かれる、ルイス・フェリペ・スコラーリらしからぬ古典的なモノになっていた。

 結果は2対2のドロー。だが好感度は終わり方がよかった分だけイタリアの方が高い。少なくとも昨年準優勝したユーロ2012当時の力は健在だ。スター選手はいないが、全員が抜け目なくけれんみのないプレイをする。相手ボールの時間が長くてもいらつかないことが、彼らの強みだ。

 ブラジルについての問題をもう1点いえば、メンバーの中に、爆発力のある選手がいないことだ。1トップ下で先発したネイマールは、全盛時のリバウドやロナウジーニョのレベルにはほど遠く、オスカルもセンスは光るが迫力に欠ける。日本ではフッキの名前で親しまれていたフルクも、2~3年前の方がプレイにはキレがあった。

 スーパースター不在。さらにいえば仕切り役も不在だ。フェルナンド、エルナネスの両ボランチも、かつてのドゥンガ、マウロ・シウバらの域にはない。これから1年強でブラジルは変われるのか。僕がブックメーカーなら、ホームの利があろうとも、少なくとも現時点でブラジルを本命には推さないだろう。

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