【CL】バルセロナを大逆転へと導いたシャビのひと言

  • 山本美智子●取材・文 text by Michiko Yamamoto photo by AFLO

 メッシが「ミランがホームで2得点入れられたのだから、どうして僕らが同じ結果を出せないことがあるだろう」と力強く話せば、イニエスタは「自分のこの手を、炎の上にかざして誓ってもいい。僕らは勝ち上がる。でも、この90分間を命がかかっているかのように戦わなければならない」とその決意を語った。

 セスクは「こういった重要な試合の時は、必ず、このクラブは、そしてサポーターは結果を出してきた。僕らみんなの情熱が、その力を倍にする」と断言し、マスチェラーノは「ひとりひとりが試合の最初から最後まで、各自の力を今よりほんの少し多く出せれば、逆転は絶対に可能だと確信している」と言い切った。

 試合前日には、ジェラール・ピケが「スタジアムに年間シートを持っていても、僕らが逆転できると信じられないなら、その人は席をほかの人に譲ってほしい。明日のスタンドには、僕らが逆転すると信じている人しか、いてほしくない」と語り、ここに『歴史的大逆転劇』の緞帳(どんちょう)があがった。

 その魔法のひと言を発したシャビ本人がピッチに立てるかが、試合前日まで危ぶまれていたが、それも杞憂に終わった。シャビは、きっちりとミラン戦に照準を合わせてケガを治してきた。試合前日にドクターからのOKをもらい、当日、スタメンとしてピッチに立つシャビの姿があった。

 バルサが逆転劇を成功させるためには、ミランを無失点に抑え、なおかつ、3点以上をマークする必要があった。そして、今年に入ってから無敗を続けているミランは、7カ月以上も1試合で3失点していないというデータを誇っていた。

 サッカーくじの結果は、ミラン勝利に大きく傾いており、「不可能ではないが、限りなく不可能に近い」と、バルサの逆転劇を信じる人々は少なかった。カンプノウに集まった9万5千人のサポーターを除いては。

 前半4分、シャビとのワンツーで前線にボールを運んだメッシが、先制点を突き刺した。このゴールがすべての始まりだった。ペドロ、ビジャ、イニエスタ、ダニエウ・アウベスらが次々とミランのペナルティエリアに入り込み、シュートを放つ。

 前半20分を過ぎる頃には、ミランのGKアビアッティは汗だくになり、絶望的な表情を浮かべていた。『いったい、俺にどれだけ失点させるつもりだよ?』。そう味方ディフェンスに訴えるかのようなその顔は、すでに勝者の表情ではなかった。

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