【ドイツ】ピッチに立ってこそ。酒井宏樹が久々のフル出場で見せた成長 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Koba Kenzo

「勇気を出して起用してくれた監督に感謝しているし、それに応えたかった。アグレッシブにできたと思う」

 もちろんサイドバックとして、守備面での貢献も大きかった。この日対戦したニュルンベルクのMF清武弘嗣は「宏樹のサイドからは一回も崩せなかったし、頑張っていたと思う」と語る。

 酒井自身もまた、「感触として悪くなかった」と言い、「もっともっと(プレイの)質の部分とか試合勘とか、そういう部分を高めていければなと思う」と語り、手応えをつかんだ様子をうかがわせた。久々のフル出場。充実の90分間だったのではないだろうか。

 しかし、酒井は「でも」と言葉をつないで、こうも話す。

「また勝てなかったので、次こそは勝てるようにしたい。(自身が先発出場したELの)レバンテ戦でも(ブンデスリーガの)ボルシアMG戦でも、勝っている場面で追いつかれることが多かった(レバンテ戦は2-1から2-2の引き分け、ボルシアMG戦は2-1から2-3の逆転負け)。自分の逆サイド(からの失点)だったけど、チームとして勝てなかったのはすごく悔しかった」

 実際、ニュルンベルク戦のロスタイムに同点ゴールを許した瞬間も、2-2で試合終了となった瞬間も、ピッチ上の誰よりも悔しそうにしていたのが酒井だった。久々の出場だっただけに、勝利で飾りたいとの思いが強かったのだろう。

 それでも、今季ここまでの流れを考えれば、酒井にとって一筋の光明が差した試合だったことに変わりはない。

「いつ出番が回ってきてもいいように、練習中から常に100%でやっている。今回は誰かの累積(警告による出場停止)とか、誰かがケガだから出場というのではなく、自分としては感触を得たなかでの出場だったので、気持ちよくプレイできた」

 酒井の胸の内を察してか、「練習中には細かいことも言われるし、怒られたりも褒められたりもする」ミルコ・スロムカ監督からの試合前の指示は、「リラックスしてエンジョイしてこい。それだけでした」という。

 プロのサッカー選手である以上、やはりピッチに立ってこそ。フル出場できたからこその課題も見えた。酒井は「質の部分や試合勘」を高めるためにも、今は「90分しっかり走り切れるフィジカルコンディション」を必要な要素として挙げる。

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