【CL】パリSGがアウェーで勝利も、痛すぎる終了間際の大失態 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Getty Images

 しかも、この20歳の新鋭を気持ちよくプレイさせるために、ラベッシ、パストーレが巧みなポジショニングでサポート。ルーカスのドリブルは、彼らの助けでさらに威力を増した。事実、10分の先制点はパストーレが送ったスルーパスをルーカスが豪快に叩き込み、逆に43分の2点目はルーカスがドリブルで右サイドを深くえぐり、ゴール前にラストパスを送ったところを、フリーで待つパストーレが難なく決めている。"怪物"イブラヒモビッチがさほど目立たない攻撃は、しかし、それでいて実に迫力があった。

 3トップが中央に集まってしまい、中盤でパスはつながってもゴールが近づくほどに手詰まりになっていくバレンシアと対照的に、PSGの攻撃は確実にチャンスをつくり出していく。しかも早い時間に先制できたことで、両SBが無理に攻撃に加わる必要もなくなり、守備が安定したことも、試合を進めやすくした。

 ゴール裏3階席に隔離され、数では圧倒的不利のPSGサポーターが気勢を上げる一方で、スタンドのほとんどを埋めたホームのサポーターから聞こえてくるのは、嘆息とヤジばかりだった。

 ハーフタイムを挟んでも、試合の流れは変わらなかった。バレンシアは後半開始からバルデスを投入し、ソルダードとの2トップで反撃に出たが、ほとんどシュートチャンスには至らず、反対にPSGはカウンターからあわやというシーンをいくつもつくり出した。

「スピードのある選手を生かして効果的なカウンターができた」と話しながらも、「もっと得点できた」と悔しさもにじませるパストーレ。追加点は取れずとも、アウェーの第1戦で2-0のまま終われれば文句なし。試合はPSGが望む結果に向かって進んでいた。

 ところが、である。試合時間が残り1分を切ったところで、バレンシアがFKからラミのゴールで1点を返すと、試合は思わぬ方向へ動き出す。

 すでにロスタイムに入り、PSGが時間を使って試合を終わらせようとしていたときだ。敵陣右コーナー付近でボールをキープしていたイブラヒモビッチが、奪われたボールを取り返そうとあわてて、グアルダードに激しくチャージ。相手の足を踏みつけるように出した足が悪かったのか、相手の胸に当たったヒジが悪かったのか。いずれにせよイブラヒモビッチにはレッドカードが示され、退場を命じられたのである。

 その瞬間、スタンドはこの日一番の大歓声。結局、2-1のまま終わったが、それでも流れは、にわかにバレンシアへと傾いたことに変わりはない。絶対有利の状況にあったPSGは、2ゴールのアドバンテージを1ゴールに減らしたばかりか、次戦は出場停止でエースを欠く。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る