【ロシア】本田圭佑の移籍話がいつも噂で終わってしまうワケ

  • 中山 淳●文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 確かに、この冬最大の大型移籍となったイタリア代表FWのバロテッリ(マンチェスター・シティ→ミラン)については、約25億円(ボーナスも含めると約30億円)もの大金が動いた。だがそれは、例外中の例外。金銭が発生するほとんどの移籍は多くて数億円単位というのが関の山で、やはり本田獲得に16億円もの大金を積めるのは、一部のビッグクラブに限定されてしまう。

 もっとも、本田にバロテッリと同じレベルの市場価値があれば話は別だが、さすがにそこまでの域には達していないのも事実。日本人で唯一ドイツS級ライセンスを持ち、ブンデスリーガに詳しいサッカー解説者の鈴木良平氏はこう語る。

「例えば、一選手の獲得に16億円もの大金を使えるクラブは、ドイツではバイエルン・ミュンヘンしか存在しない。バイエルンは昨年の夏にスペイン代表のMFハビ・マルチネスをアスレチック・ビルバオから約40億円で獲得したが、それはどうしても必要な選手と考えて、そこに資金を集中投下したから実現した。本田もクラブから絶対に必要とされ、そこまでの価値を認められれば、移籍は可能かもしれない。しかし、今のバイエルンのメンバーを見ると、それは現実的な話ではない。イングランドやスペイン、イタリアなど、主要国のビッグクラブにおいても、それは同様だと思う」

 そうした状況にあっても、一度は本田獲得に本腰を入れたクラブがあった。それは、ちょうど1年前の冬のマーケットだった。イタリアのラツィオがCSKAモスクワに対して、約11億円プラス出来高約4億円(その後、約12億円プラス出来高約3億円のオファーに上方修正)の計15億円とされる正式オファーを出した。決してお金持ちクラブとは言えないラツィオだが、本田はどうしても必要な人材だったのだ。

 ところが、その移籍話は結局破談に終わった。金額的にはクリアしていたものの、ラツィオ側が3年間に渡る分割払いを条件としたことがネックとなったと言われる。CSKAモスクワは、ラツィオが分割払いを実行するかどうかに疑問を持ち、リスクの高い取引を避けたのだ。

 背景には、近年スペインやイタリアを中心に、世界中で発生している移籍金の未払い問題がある。

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