ブラジルW杯は「クリーン」な大会になるか

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

サルバドールに建設中のスタジアム。6月のコンフェデレーションズカップでも使用される予定(写真●ロイター/アフロ)サルバドールに建設中のスタジアム。6月のコンフェデレーションズカップでも使用される予定(写真●ロイター/アフロ)【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】W杯開催国ブラジルの現在(後編)

 ワールドカップは腐敗を誘発する。大会に向けてスタジアムやインフラが急いで造られる。ブラジル大会の総予算は271億レアル(約1兆1800億円)とされているが、この手のビッグイベントでは経費が予算を超えることが珍しくない。誰かの友人が建設会社を経営していれば、なおのことだ。

 だがブラジルの会計調査院は予算の使い道をチェックしているし、無駄遣いが見つかれば予算を削減させることもある。会計調査院は3カ所のスタジアムの建設計画を調べ、予算を約16%削減させた。「いくつかの項目について支出が多すぎると判断した」と、会計調査院の副長官ルイス・ナバロは僕に語った。ワールドカップのための交通網建設プロジェクトでも、数億レアルの予算が削られた。

 こんな話は前回の南ア大会では聞こえなかった。南アではスタジアム建設費が高騰する一方だった。

 ワールドカップをめぐる汚職について、ナバロはこう語った。「これまで大きなスキャンダルは起きていない。こう言うのも何だが、意外な話だ」。ワールドカップに向けたブラジルの準備は緩慢で、効率も悪く、市民の目に見えないことが多い。それでも、おおむねクリーンであることは間違いない。

 ブラジルの国際政治学者でスポーツ省の幹部に転じたルイス・フェルナンデスは、政府の仕事に就いてから金の使い方のチェックが実に厳しいことに驚いたと、僕に語った。「開発プロジェクトを動かすのが必要以上にむずかしくなっている。非常にお役所的だ」と、フェルナンデスは言う。しかしブラジルの歴史を考えれば、そこまでやらざるをえないことをフェルナンデスは理解している。

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