【スペイン】今季も驚異の記録ラッシュ。メッシという名の「奇跡」は止まらない (3ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko
  • photo by Rafa Huerta

 そして、ジョゼップ・グアルディオラがトップチームを率いるようになったことが、つまずきかけていたメッシの成長を助けることになった。サッカー選手としては早熟だったが、人間性で幼さの残るメッシに、父親的役割を果たしたのがペップ(グアルディオラの愛称)だった。

 グアルディオラはケガをしないためにも食事の重要性を教え、さらに、試合ではひらめきだけではなく、時には流れを読み取る必要があることを辛抱強くメッシに教え続けた。メッシが頭ではわかっていても、うまく消化できずにいたそうしたことを、少しずつ理解できるように、グアルディオラは丁寧に教えていった。

 メッシが気持ちよくプレイできれば、チームは機能する。それを熟知していたコーチスタッフは、メッシを中心とするチームづくりに細心の注意を払い、心血を注いだ。それは、ティト・ビラノバがチームを率いるようになっても変わっていない。それどころか、バルセロナがティトのチームになってから、ゴール数やアシスト数など、メッシの成績は勢いを増している。

 これは、一朝一夕では築くことができない、メッシのティトに対する10年来の信頼があってのことだ。

 実際、メッシは「僕のプレイスタイルは、14歳のときから基本的に変わっていない。それは監督もよくわかってくれている」と話し、自分のよき理解者としてのビラノバ監督に全幅の信頼を寄せている。

 今年は初めての息子、チアゴくんが生まれ、「僕は世界一、幸せな男だ」と父親としての喜びをかみしめ、プライベートも充実、幸せにあふれているメッシ。以前の引っ込み思案な性格は影を潜め、試合後、積極的にメディア対応を行なうなどの変化もあり、自分がクラブのリーダーだという自覚も出てきたようだ。

 息子のためにゴールを捧げるという新たな目標を手に、メッシは新年に向かって走り出している。そのレオ・メッシと同じ時代に生き、そのプレイをこの目する幸せを享受できること、それこそが私たちにとっての大きな奇跡と言えるかもしれない。

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