【クラブW杯】チェルシーの「個の能力」を上回ったコリンチャンスの「チーム力」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Fujita Masato,Sano Miki

有利と予想されていたタレント豊富なチェルシーだったがゴールを奪えず準優勝有利と予想されていたタレント豊富なチェルシーだったがゴールを奪えず準優勝
「ダニーロは守備のマーカーとして非常に優れているうえに、ボールを奪ったら、そこから攻撃を始めることができる。そして、エメルソンを中央に移し、(FWの)ゲレーロの近くでプレイさせることで前線のスペースを狙わせた。加えて、(エメルソンとゲレーロの)2トップには、(チェルシーの)ボランチのランパードから前線へ送られるパスを封じるよう指示した」

 果たして、チテ監督の策は見事にハマった。

 準々決勝では、ふたりのボランチ(ダビド・ルイス、ミケル)からのパスで攻撃が組み立てられたチェルシーだったが、この決勝ではボランチが機能不全に陥った。チテ監督は「モーゼス、アザールのスピードを警戒していた」が、後ろに人数を割いて止めるのではなく、そこへのパスの供給源を遮断することを選択したのである。結果、モーゼスはもちろん、準決勝では猛威をふるったアザールも完全に沈黙した。

 チーム全員がそれぞれの役割を果たし、チェルシーに自由な攻撃をさせない。DFラインを高く設定するがゆえにピンチを招くこともあったが、何本か打たれた決定的なシュートは、GKカッシオがスーパーセーブを連発して防いだ。これにはチェルシーのラファエル・ベニテス監督も、「チャンスはあった。それをものにできなかったことに尽きる」と嘆くしかない。

 幾重にも築かれたコリンチャンスの堅陣は、ついに最後まで破れられることがなかった。殊勲のカッシオは言う。

「コリンチャンスはこれまでのブラジルのチームと違い、全員で守ることができる。ボールを失ったら、すぐに戻ってマークする。それはこれまでのブラジルにはなかったことだ」

 そのカッシオは、今大会のゴールデンボール(MVP)を獲得した。こうした大会ではゴールを決めた選手がMVPに選ばれることが常であり、GKの選出は非常に珍しいが、今大会の活躍を考えれば納得の選考だった。

 それでも、カッシオは自身の手柄は横に置いて話す。

「(ゴールデンボール獲得は)とてもうれしいが、ずっと目標にしてきた世界チャンピオンのトロフィーを取れたことのほうがうれしい。準決勝でもすばらしい試合をしたチェルシーのほうが有利と言われていたが、それでも僕らは勝てると信じ、あきらめずにチームが団結し、タイトルを目指した。それこそが優勝できた要因だと思う」

 値千金の決勝ゴールを決めたFWゲレーロもまた、あくまでチームの勝利であったことを強調し、こう話す。

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