【クラブW杯】今年の決勝は面白い!「攻撃力のチェルシー」対「堅守のコリンチャンス」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「いい試合だった。ハイテンポでいいプレイをし、いいゴールもあった。運動量も多かったし、チームが組織化されていた」

 指揮官だけではない。試合後の会見場の雰囲気も実に穏やかで、地元イングランドの記者が見せる反応も、概(おおむ)ね「心配していたけど、いいサッカーをしているじゃないか」という好意的なものばかりだった。

 無理もない。今季のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)では、ディフェンディングチャンピオンとして史上初のグループリーグ敗退。ロベルト・ディマッテオ前監督が解任される事態にまで発展し、チーム状態はお世辞にも良好とは言えないものだったのだ。

 ところが、その後のプレミアリーグで徐々に調子を上げ、その流れに乗って迎えた今大会でもいきなりの快勝。攻撃陣のコンビネーションも冴え、CLでのもたつきがまるで嘘のようだ。

 最近好調のFWフェルナンド・トーレスについて問われたベニテス監督が、「チームが好調なので、チャンスが作れる。チームがチャンスを作るから、彼が点を取れる」と、あくまで「チーム自体がよかった」と強調するのも、当然のことである。

 対照的だったのは、12月16日の決勝でチェルシーと対戦する、南米王者のコリンチャンスだ。

 12日に行なわれた準決勝では、アフリカ王者のアル・アハリに勝つには勝ったが、わずか1点を辛うじて守り切る薄氷の決勝進出。特に試合終盤は猛攻にさらされるなど、苦戦の印象が強かった。

 当然、地元ブラジルからやってきた記者の反応は厳しくなる。「期待していたのに、まったくダメじゃないか」と言わんばかりの辛辣な質問も飛び出し、試合後の会見場には緊張感さえ漂った。

「(苦戦は)この試合の重さから来るプレッシャーによるもの。結果を求めなければならない試合では、いつものプレイができなかった」

 コリンチャンスのチテ監督はそう釈明したが、こうして準決勝2試合を振り返ると、決勝で分があるのは、どう見てもチェルシーのほうである。

 とはいえ、コリンチャンスの売りは堅守。王国ブラジルの代表としては、少々攻撃に物足りなさがあったのは確かだが、押されながらもアル・アハリの攻撃をしのぐという展開は、持ち味を発揮しての勝利だったと見ることもできる。チテ監督の「ペナルティエリアの外からのシュートはあったが、突破はされていない」という言葉も、単なる強がりには聞こえなかった。

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