【クラブW杯】「らしさ」を発揮して勝利。広島が見せたJ1王者の風格 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 オークランド戦でも、特に前半はボールポゼッションこそ上回るものの、なかなかゴール前に迫ることができずにいた。にもかかわらず、MF森崎和幸は「相手が引いていた分、後ろで(ボールを)回すことが多かったが、そういう展開は予想していた」と言い、こう続ける。

「中がダメなら外、外がダメなら中と何回もやっていくことで、どこかが空いてくるし、そうやって揺さぶっていけば、相手も必ずバテてくると思っていた。ある程度想定したとおりの試合ができた」

 そこにあったのは、「90分間焦らず、粘り強く戦えば、どこかで(得点が)入るという自信」(森崎和)である。

 DF千葉和彦が「みんなで、我慢しようと言い合っていた」と語る前半を経て、後半は「ミカ(ミキッチ)がひとりで縦に勝負できるので、クロスに対して、僕と寿人と(高萩)洋次郎の3人で入っていこうと話した」と森崎浩司。後半、広島が巧みにギアを上げ、攻撃の迫力を増したのは明らかだった、

 とはいえ、66分に青山のゴールが決まる直前には、広島は怒涛の連続攻撃でオークランドゴールに迫りながら、GKの好セーブによってビッグチャンスを逃していた。結果的に青山のスーパーゴールが飛び出したからよかったものの、それがなければ、かなり嫌なムードが漂った可能性もあったはずだ。そんな展開にも、森崎和はこともなげに言う。

「確かに、入りそうで入らないと焦れてくる。でも、今はメンタル的にフラットな状態を保てる。実際、そういう場面で耐えられたからタイトル(J1優勝)も取れた。もし、あそこで(青山のゴールが)入っていなくても、90分間のどこかで入っていたと思う」

 殊勲の青山もまた、「僕が取らなくても、誰かが取っていたと思う」と振り返れるだけの余裕が、今の広島にはある。

 12月1日に行なわれたJ1最終節から、わずかに中4日。その間にはJリーグ・アウォーズ(表彰式)もあり、決して楽な日程で臨んだ大会初戦ではなかった。それでも森保一監督は、「十分なトレーニングをしてきたとは言えないが、モチベーション高く戦ってくれた」と、選手たちを称えた。
 
 森崎和もまた、「これをやっていかないと、来年のACL(AFCチャンピオンズリーグ)は戦えない。しっかりと気持ちを切り替えて戦えたのは、成長した証拠だと思う」と語る。

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