【スペイン】ダービーにも地元メディアにも完勝したモウリーニョ (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Koichi Yamamoto
  • photo by Mutsu KAWAMORI/MUTSU FOTOGRAFIA

 少なくとも、モウリーニョはその時間に姿を見せることを前日に話している。本当にクラブのことを思い、モウリーニョに対する批判を持つのであれば、決して試合開始40分前にスタジアムに駆けつけることは苦でもなんでもないはず。反モウリーニョ派はその機会を自らつぶしただけに過ぎず、スタンドの観客の数の少なさを材料にポルトガル人監督を批判することに正当性は見いだせない。

 モウリーニョに対する批判の最大の原因は、ライバル、バルセロナにリーグ戦で大きく水をあけられていることにあるのは間違いない。だが、メディアが行なうキャンペーンはレアル・マドリードのことを純粋に考えてのものではなく、ただ対応が厄介なモウリーニョに対する嫌悪感が強いこともある。

 傲慢な記者会見での舌戦でモウリーニョを前にイニシアチブを握ることができないこと、就任以前にはあった選手の定例会見の撤廃、そして隣国嫌悪......スペインメディアがレアル・マドリードという名のもとにモウリーニョに批判の矛先を向ける理由はいくらでもある。だが、彼がチームを去った後のことを議論することはなく、メディアはいかにチームから追い出すか、Xデーの日を探しているといっても過言ではない。

 マドリードダービー後の記者会見でモウリーニョの片腕であるカランカは「マドリディスタ、ベルナベウに監督は喧嘩を売っているわけではない。ピッチ、バルデベバスでの練習、記者会見場でチームの為に前に立つ、決して隠れることのない監督」と、モウリーニョがプロフェッショナルとしてレアル・マドリードを率いていることを語った。

 もちろん、人である以上好き嫌いがあるのは当然のこと。だが、マドリードダービーで見せたモウリーニョの姿勢はプロ監督として矢面に立つことを厭わない毅然としたものであり、彼が一流監督と言われる所以を感じさせるものだった。

 リーガのタイトルを防衛することは現実的に難しいかもしれないが、まだ抗(あらが)う時間は十分に残されている。そしてチャンピオンズリーグではクラブ悲願の10度目のタイトル制覇の可能性を秘めている。

 仮定の話ではあるが、シーズン終了後、レアル・マドリードファンを満足させるタイトルをチームにもたらしたその時、スペインメディア、ファンはどのような反応を見せるのだろうか。今と変わらぬ批判を続けているのか、それとも案外、手のひらを反して......。

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