【スペイン】不調レアル・マドリード。問題の根はC・ロナウドにある

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 R・マドリードはすなわち、ボールを奪われた瞬間、穴だらけになる。中盤はスカスカ。人の配置はバラバラ。ブロックは形成されていない。前線からのプレスも弱い。C・ロナウドがマイボール時の専任選手であるところに、何より問題の根があるように見える。彼のポジションは状況によって変化するが、基本的には左ウイングだ。彼が守備に参加しなければ、その背後は必然的に穴になる。ドルトムントにもそこを突かれた。

 シャビ・アロンソのパートナーとして守備的MFに起用したモドリッチが守備に不安を抱える選手であることも、スカスカになる原因だった。

 たまりかねたモウリーニョは後半頭から、そのモドリッチに替えてエッシェンを投入。同じく、イグアインに替えてカジェホンを投入したことで、バランスは何とか回復した。

 イグアインとカジェホンの交替は、ベンチに下げる選手と異なるポジションの選手を投入する、いわゆる戦術的交替だ。カジェホンが入った場所は左ウイング。その結果、C・ロナウドは玉突きされたように真ん中へポジションを移動した。といっても、イグアインのように、センターフォワードの位置に張って構えたわけではない。メッシのように0トップ気味で構えたのだ。

 思い出すのは08~09のチャンピオンズリーグ決勝だ。バルサのグアルディオラ監督、マンUのファーガソン監督とも、それまでウイングで起用していたメッシ、C・ロナウド両選手を、直接対決の大一番でセンターフォワードで起用した。

 守備のリスクはこちらの方が断然低いからだ。相手のセンターバックは攻撃に参加してこないので、真ん中のメッシ、C・ロナウドが守備に参加しなくても大勢に影響はない。それこそが0トップの最大のメリットなのである。

 とはいえ、R・マドリードは最後まで、抑揚のない直線的で強引なサッカーをした。バタバタした風格のない一本調子の試合をした。このサッカーはバルサに比べると安定感に乏しい。格下に取りこぼしやすいサッカーと言ってもいいだろう。

 その直線的な感じは、むしろ挑戦者として臨む場合に効果を発揮しそうな気がする。一か八かの要素を秘めたラフな攻めを、少なくともバルサは脅威に感じているはずだ。

 チャンピオンズリーグで、R・マドリードはバルサとの直接対決に持ち込むことができるか。ブックメーカーの予想は1位バルサ、2位R・マドリード。

 それでもなおかつ、R・マドリードが2位に位置するところに、僕はこの世界の停滞を感じる。

 スペインは、今季UEFAリーグランキングで、イングランドをかわし、2007年以来、5シーズンぶりに首位の座に就いたが、代表チームの世界でスペインが独走するのと同じように、この現象は他国の不甲斐なさにも原因がある。ドルトムントのようなチームがひとつでも多く現れることに期待したい。

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