【スペイン】 モウリーニョに育成は無理!?
ユース組織に課題を抱えるレアルの未来図

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko
  • photo by Getty Images

 もしも、モウリーニョが本気でカンテラづくりを目指し、本当にトップと同じプレイシステムで戦うべきと思うなら、「彼(トリル)には彼の自治権があり、私には私の自治権がある」などと他人事のように話さずに、トップチームと同じスタイルでプレイしろと命じるべきだろう。1988年にバルセロナの監督に就任したクライフが行なったように。

 そのクライフの命を受けた当時のバルセロナユースの各年代のチーム監督たちは、一斉に反発したという。そんなのは理想論だ、子どもがトップチームと同じ練習をするなんて馬鹿げている、などの批判が槍のように降った。だが、クライフは頑としてその考えを変えず、その理想を追求した。その結果が、今のバルセロナである。

 ビッグクラブには、ビッグクラブゆえの苦悩がある。モウリーニョが同じ代理人を持つ選手をえこひいきしようが、それに結果が伴えば、それも構わない。だが、結果が出せず、目に余る横暴だけがはびこれば、それは内部分裂を招くだけだ。

 カシージャスとモウリーニョの不仲説がしょっちゅう取り上げられるのは、火のないところに煙は立たず、と考えるべきなのだろう。果たしてモウリーニョは、レアルのカスティージャすらも巻き込み、巨大な城を築きあげることができるのか。その城が築かれた時、どういった展望がそこに広がるのか。目の前には靄(もや)が広がっているのに、まるで、モウリーニョだけは到着点が見えているかのように、自らの道を突き進んでいる。

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