【CL】好感度の高い地方クラブ。好調マラガは台風の目になるか? (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 だからといって、マラガは決して守備的に試合を進めていたわけではない。むしろ、強固な守備を盾にボール支配率を高め、試合の主導権を握るというのが、マラガのスタイルだ。

 なかでも目立つのが、冒頭でも紹介したホアキンの活躍である。かつてのドリブル一辺倒というイメージから一変、今では優雅ささえ漂うプレイメーカーとなった。

 ポジションで言えば、2トップのうちのひとりということになるのだろうが、実際は神出鬼没。高い位置でトップをサポートもすれば、サイドに開いてサイドバックとのコンビネーションも作る。イスコ、ポルティージョら、テクニックのある若い選手が中盤にはいるが、31歳の熟練の技が攻撃の中心にあることは確かだ。

 ゆえに、サポーターからも愛されている。このミラン戦では前半、ホアキンはせっかく得たPKを外し、先制のチャンスを逃した。ところが、前半終了のホイッスルが鳴り、選手がスタンド下に引き上げようとしたとき、期せずして起きたのは「ホアキン・コール」だった。

 果たして64分、そんな期待に応えるようにホアキンが決勝ゴールを決めるのだから、スタンドが盛り上がらないはずはない。マラガのホームスタジアム「ラ・ロサレダ」は収容人員が3万人にも満たない小さなスタジアムではあるが、そのなかでは熱狂的なサポーターたちがあちこちで握手や抱擁をかわし、歴史的勝利を喜んだ。ホアキンが笑顔で語る。

「不運にもPKは失敗してしまったが、こういうこともある。ゲームをうまくコントロールできたし、重要なのはマラガが勝ったということ。分かってほしいのは、この勝利が簡単にできることではないっていうことだ」

 2010年にカタールマネーによって買収されたマラガは、3季目にして早くもCL初出場を果たした。結果だけを見ると、いかにもマネー効果が強く出ているように感じる。だが、そこに金満のにおいはない。昨季途中には給料未払いなどの問題が表面化したほど。これはカソルラをアーセナルに移籍させるなど主力を放出して解決したが、今季の補強はうまくいかず、目立った新加入選手は元アルゼンチン代表のサビオラぐらいだ。

 つまり、マラガはスター選手がかき集められ、贅を極めたチームでは決してない。ホアキンやサビオラらのベテランと、イスコらの若手がうまくかみ合っている様子には、地方クラブならでは一生懸命さが漂い、実に好感が持てる。

 昨季のCLは、バルサとレアル・マドリードが圧倒的な強さを見せた。結果的に、両者揃って準決勝で敗れたわけだが、2強状態は明らかだった。

 だが、今季は違う。圧倒的な強さを見せるクラブがなく、混戦模様。水色と白の縦縞が、今季CLの台風の目となっても不思議ではない。

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