【フランス】ビッグクラブへの途上。一気に戦力アップしたパリ・サンジェルマンが欧州勢力図を変える (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi
  • photo by Getty Images

 もっとも、チェルシーやマンチェスター・シティが数年がかりで頂点に立ったように、大金を使ったからと言ってすぐに結果が出るわけではない。PSGもその例に漏れず、昨シーズンはスモールクラブのモンペリエがリーグアン初優勝を遂げ、PSGは2位の座に甘んじる結果に終わっている。

 そして、リーグ優勝が至上命令となった今シーズン、冒頭のふたり以外に、アルゼンチン代表FWエセキエル・ラベッシ、イタリア国内ではピルロの後継者と評される19歳の至宝マルコ・ヴェラッティ、アヤックスからはオランダ代表右SBのグレゴリー・ファン・デル・ヴィールを獲得。気づけば、各ポジションにふたり以上のレギュラークラスの戦力を抱えるタレント軍団へと変貌を遂げたのである。

 とはいえ、これまで補強した選手を見てみれば、PSGが単にビッグネームだけを獲得しているわけではないことが分かるはずだ。とりわけ、今シーズン最大のサプライズと言われる19歳のヴェラッティ獲得(約10億円)は、しっかりとしたスカウティング網と広い人脈、そして確固たる強化戦略がなければ実現しえなかった補強と言える。

 そして、その総指揮を執っているのが、レオナルドなのである。現役時代にはサンパウロ、鹿島、PSG、ミランなどでプレイし、ミランやインテルでは監督も経験したレオナルドがスポーツ・ディレクターを務めていることは、現在のPSGを語るうえで重要なポイントとなっている。

 現在と将来を考慮したバランスのよい補強策は、レオナルドの存在なくして実現し得なかったと言えるだろう。

 ここまで、PSGはチャンピオンズリーグの第2節でポルトに敗れたものの、公式戦の黒星はその1試合のみ。国内リーグではライバルのマルセイユに首位を譲るものの、第4節のリール戦で固まった4-3-1-2が機能してからは、それまでの不振が嘘のような圧倒的な強さを誇っている。

 とりわけ、出場した7試合で9ゴールを記録して得点王ランキングトップに立つイブラヒモヴィッチは、別格のプレイでチームをけん引する。

 10月7日に行われた国内最大のビッグマッチ、フランスダービーの対マルセイユ戦でも、PSGの強さは証明されていた。ゲームの主導権を握り続けたのはホームの首位マルセイユ。しかし1点を先制されたPSGは、イブラヒモヴィッチがCKと直接FKのチャンスでスーパーゴールを連発。わずか2分間で、あっさり逆転して見せた。最終的に試合はドローで終わったが、マルセイユ渾身のベストプレイをもってしても、結局PSGに土をつけることはできなかったのである。

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