【スペイン】メッシとロナウドが輝くも、バルサとレアルに存在するチームの停滞感 (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michko
  • photo by Getty Images

 試合自体は、ホームでの戦いだったにもかかわらず、バルセロナはディフェンス面で多くの不安を抱えて試合に臨んだ。下馬評ではバルセロナ有利といわれていたが、実際は、プジョルとピケ、ふたりのセンターバック不在という早期解決が見込めない、あまりにも大きな問題をバルセロナは抱えていた。

 バルセロナのプレイスタイルの特徴のひとつに、守備ラインからの攻撃スタートがある。GKのバルデスしかり、両センターバックしかり、彼らのポジショニングとパスの精度は、バルセロナの攻撃のベースになっている。わずかなミスが命取りになる試合では、ゲームを立て直すべく、まずはセンターバックにボールを戻すことも、バルセロナでは強く意識されている。それだけ、バルセロナのセンターバックの役割は重いのだ。

 にもかかわらず、今回は主軸でキャプテンのプジョルが負傷欠場し、また、クラシコに照準を合わせて故障からの回復トレーニングを積んでいたピケも、結局は間に合わなかった。

 代わってセンターバックに入るマスチェラーノは、ビラノバ監督が「今季、唯一、彼だけは1試合も休ませることができていない」と言うほど頼りになるDFだが、スピードには欠ける。そして、レアル・マドリードのFWは、ロナウドはいわずもがな、誰をとっても非常にスピードがあり、ディフェンスラインの裏を取るのに長けている。そこで、ビラノバはスピードのあるアドリアーノを選んだ。

 この試合がクラシコでなければ、ビラノバは今季獲得したソング、あるいは下部組織からトップに引き上げて育てている最中のバルトラを起用したことだろう。だが、今回はほかでもないクラシコだった。守備面でのリスクは犯せない。実際、2失点はしたものの、アドリアーノはこの初めての難解なポジションを無難にこなしたといえる。

 一方、リーグ開幕直前の国内スーパー杯では、前半から強気の攻めが功を奏し、勝利を手にしたレアルだったが、今回のクラシコに関して言えば、そういった「勝利への欲」がモウリーニョの戦略からは見られなかった。今回は試合前からバルセロナのディフェンスの脆さが指摘され、それはわかっていたのだから、モウリーニョは徹底的にそこを突くべきだった。

 このクラシコで、これまでのチーム不調の原因として戦犯扱いされていたエジルをようやく起用したものの、シャビ・アロンソ、ケディラも加えるディフェンシブなトリプルボランチの布陣は崩さなかったし、カカやモドリッチなど試合展開を変えられる選手をスタメンで起用するといった積極性もなかった。

 前半23分にレアルは敵地で先制点をマークしたのだから、そこで一気に勝負に出てもよかったが、モウリーニョ監督はベンチから動かず、前半27分にバルセロナのダニエウ・アウベスが負傷し、モントーヤが投入されたときも、前半31分にバルセロナに同点に追いつかれた時も、指揮官が指示を出すことはなかった。

 後半16分、メッシに追加点をマークされてから、初めてモウリーニョは動くが、そこで行なった交代は、ベンゼマとイグアインを取り替えるというもので、システム自体にメスが入れられることは最後までなかった。

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