【イングランド】シティはサッカー界に次の「王朝」を築くかもしれない (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by GettyImages

 シティはこのデータを集めるためオプタに金を払い、これまでは門外不出にしてきた。だが今回はオプタの後押しもあって、一般に無料で公開することにした。その見返りとしてシティとオプタが期待しているのは、フットボールを愛する経営コンサルタントや統計学者、博士課程の大学院生やブロガーなどが、このデータを使ってフットボールの新しい真実を見つけることだ。

 このプロジェクトは、野球やバスケットボールからヒントを得ている。これらのスポーツでは、統計をもとにした発見をするのはプロのクラブではなく、外部のアマチュアだった。野球界で統計の重要性にいち早く気づいたビル・ジェイムズは、カンザス州の食品工場でボイラーの火を前にして働いていた。ジェイムズや他のアマチュア研究家たちが、野球界で重宝がられていた戦術(たとえば盗塁など)にそれほどの価値がないことを見つけ出した。さらに重要なことにアマチュア研究家たちは、チームに過小評価されている選手を見つけ出す評価基準をつくった。チームはアマチュアから学べるが、その逆はない。

「この業界でもビル・ジェイムズのような存在を見つけたい」と、フレイグは言う。「ビル・ジェイムズにはデータが必要だ。これまではフットボール界のビル・ジェイムズになれる人物がいたとしても、データを持っていなかった。金がかかるからだ」

 アマチュアがクラブにとって有益な発見をしてくれることを、シティは願っている。フットボール界のデータ革命がこれまで滞ってきたとも考えている。「過小評価されている選手を見つける作業は、うちでもやろうとした」と、ウィルソンは言う。「みんなそうしようとしたけど、思ったほど簡単にはいかなかった」

 プレミアリーグのクラブでは、たいていひとりはデータアナリストを置いているが、データから新しい知見を得る力量があるのは3~4人しかいないと、フレイグは言う。「この分野が発展するためには、もっともっと多くの人の力がいる。だから僕らはドアを開いて、言うことにしたんだ。『一緒にやってくれませんか?』と」

 プロジェクトの進行状況については、フレイグがそのつどツイッターで紹介している(アカウントは@MCFCGavinFleig)。

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