2012.08.29

平壌で目撃。知られざる北朝鮮サッカーの育成の現場

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko
  • photo by Kimura Yukihiko

 各小中学校には、必ず女子サッカー部があり、日々練習に明け暮れるが、そこで選抜された選手たちは、さらにピョンヤンの青少年体育学校に集まってトレーニングを重ねる。この施設はナショナルトレセンと言えようか。

 ここで注目したいのは、日本の学制が小学校6年、中学校3年の6・3制であるのに対し北朝鮮のそれは4・6制であることである。小学校を四年で卒業して中学に入学する。

 この区分けを日朝スポーツ交流促進連盟の故・南駿一日本卓球協会監事はかつてこう絶賛している。
「これはスポーツの技術を教えるのに実にうまい制度です。私は小学校の教員もやったことがありますが、小学校の四年生までは幼年期の終わりで、五、六年になると青年期前期です。心理的にも違うのでこれは分けた方が良いんです」

 日本女子では長らく、中学生年代の育成機関が乏しく、空白期間となっている問題が指摘されてきた。小学校のスポーツ少年団でサッカーに勤しんだ子どもたちが、中学に進学するとサッカー部がなく、あたら逸材がやむなく他の部活動に入部するという現象である。

 北朝鮮では7歳で女子サッカー部に入ると実質、高校1年まで公立義務教育の部活動で指導がなされる。継続性もさることながら、教えるのは素人のいわゆる顧問の先生ではなく、必ず指導ライセンスを持つ専任のサッカーコーチが就くのである。

 この7月ロンドン五輪の最中、ピョンヤン市内の小学校の育成現場を取材した。1954年に開校したチャンギョン小学校(一学年約260名)の校庭では朝鮮体育大学を卒業した専門コーチの金哲秀監督が指導していた。赤いウエアに身を包んだ監督はまだ二十代。身体も動く。
金哲秀監督と教え子の金秀蓮選手
「技術は基礎を反復練習で徹底的に教えます。足の裏、甲、などいろんなところでボールを正確に蹴れるように指導します。自分も女子のこの世代、(7歳から11歳)を教えるのは初めてでしたから、最初は戸惑いがありましたね。ただ、上の世代が活躍すると小さな子どものやる気も上がるんです。ピョンヤン市では小学校の女子リーグ戦が盛んなのですが、うちのチームは昨年地区リーグで優勝して、市の大会でも三位になりました。『みんなもオンニ(お姉さん)みたいに活躍したいだろ?』というとがぜん、張り切るんです。」

――コーチされるうえでの指導法や戦術は何か参考にされているものはあるのでしょうか。
「体育大学ではソ連のサッカー専門書などがあって、これを学生時代に読んだりしましたが、あくまでも参考です。自らの経験などから、導いていきます」