【イングランド】開幕戦フル出場。香川真司はルーニー、ファン・ぺルシーと共存できる

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by GettyImages

 香川のポジションはトップ下。サイドではないか、ボランチもあるのか、などとも取りざたされたが、香川自身はトップ下が最適であるのは確か。本人も「自分の技術が生きるのはトップ下。プレミアなんかだとサイドではものすごい突破力が必要で、それはオレには無理かな」と語っていたことがある。香川のパスや、スペースがないところでのキープ力などはゴール前の中央でこそ生きる。10番的なトップ下のポジションに固執してチームの攻撃を操りたいというよりも、むしろそこでしか生きないという言い方のほうが合っているだろう。

 この日は立ち上がりの8分から、ルーニーにスルーパスを送り、その折り返しに走り込むなど、息のあったプレイも見せていた。前半38分のスルーパスにはウェルベックが抜け出すが、得点はならず。香川は攻守に豊富な運動量を見せたが、チャンスにつながるのはやはりサイドよりもゴール前にいた時だった。

 後半に入って先制点を奪われると、チームはファン・ペルシーを投入。ファン・ペルシーがサイドに入り、香川はそのまま中央でプレイした。ルーニー、ファン・ペルシーとの共存も現実的にあり得るということが分かった、彼らが器用な分、香川は中央でプレイすることができるということも示せた。それにより、このチームで十分やっていけるという手応えをつかめたのではないか。

 ただ、この日の香川にはまだ物足りないところがあったのも確かだ。ゴール前でボールを受けてもパスを選択する回数が多いのは、相手のプレッシャーがブンデスとは違い、スピードと圧力を感じたからなのか。それともまだ少し自分を出し切れていないのか。

 そのままゴール前に突っかけていけばチャンスになりそうなシーンも何度かあった。ディフェンダーの間で、小さく身軽な香川がボールを持ってひらひらとターンし、そのまま強烈なシュートを放ったり、スルーパスを出したりする......そんなシーンをつい期待してしまう。

 今後への大いなる期待を感じさせる開幕戦となった。

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