【EURO】総括!実力的にスペインと遜色なかったドイツ、ポルトガル (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 原悦生●写真 photo by Hara Etsuo

 注目はイタリアの布陣にも集まった。

 スペインの布陣は4-2-3-1と4-3-3の中間型だが、実際には前にも述べた通り、3FWの両サイドが真ん中に入る癖があるので、実際には、4-2-3-1をベースに布陣を言い換えると4-2-(1-2)-1になる。イタリアは第1戦でこれに3-5-2で対抗した。

 この場合、両軍のサイドアタッカーの数は各1人ながら、その位置はイタリアの方が高いことになる。サイドの攻防で優位に立ったのはイタリア。それが第1戦でイタリアが善戦した一番の理由だった。

 一方、準決勝でドイツに勝った布陣は、中盤ダイヤモンド型の4-4-2。決勝戦の3日前、イタリアは4-2-3-1のドイツに対して、スペイン戦とは異なる布陣で勝利を収めていた。

 この試合でイタリアは、表記上2トップの一角を占めるカッサーノが、絶えず左右に流れてプレイした。相手のサイドバックの背後に流れ、中盤ダイヤモンド型の4-4-2という布陣的には不足しがちなサイド攻撃を補う役割を果たしていた。そしてそれが功を奏した。先制点を奪ったシーンなどはその典型的な例になる。

 つまり、イタリアには選択肢が2つあったわけだ。ドイツ戦の流れ(中盤ダイヤモンド型の4-4-2)でいくか。初戦のスペイン戦(3-5-2)に立ち返るか。

 一方スペインは、準決勝のポルトガル戦で3FWの両サイドが、あまり真ん中に入り込まないサッカーを見せた。文字通り4-2-3-1と4-3-3の中間型でプレイした。試合が進み、メンバーチェンジを行なうほど、その傾向を強めていった。

 相手のポルトガルは強敵。サイドに穴を作りたくないとの思いが働いたからに他ならない。また、相手のポルトガルが、同様にサイドを固めてきたことも影響していた。3FWの左に位置していたC・ロナウドは、それまでは真ん中でプレイする傾向が強かった。その4-3-3の布陣の実際は、左の翼が短いサッカーだった。ところが、スペイン戦では一転、C・ロナウドは左のポジションを意識して守った。左右対称にこだわるバランス重視のサッカーをした。スペインもそれに従わざるを得なかったというべきだろうか。

 この事実と、準決勝でドイツを倒した流れから、イタリアのプランデッリ監督は中盤ダイヤモンド型の4-4-2を選択した。3-5-2ではきついと判断したのだろう。

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