【EURO】バランスを崩したドイツ。その隙を突いたイタリアが決勝へ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

 確かに、その右足のミドルシュートは鋭かった。わずかにバウンドしたボールをややアウトに掛けたスライス気味の強シュートは、ドイツGKノイアーに一切の反応を許さないほどだった。しかし、そのあまりにもシンプルな攻撃で追加点を許すところに、ドイツの焦りが表れていた。相手にボールを奪われると、多くの選手がガックリ肩を落とすようになっていた。そして、即座にプレッシャーをかけにいけなくなっていた。バロテッリの2点目のゴールを生んだモンテリーボのロングキックにしても、ドイツのノープレッシャーが生んだ産物だ。

「こんなハズではない」

 ドイツの選手は、イタリアに2点リードを許している現実に腹を立てているような感じでプレイしていた。そんな様子は相手選手に即、伝わる。イタリアの選手は精神的に余裕を持ちながら、残りの時間を戦うことができた。

 とはいえ、イタリアにもピンチはあった。決定的だったのは、前半36分にケディラが放ったミドルシュートと、後半16分、交替で入ったロイスが放った直接FKだ。この試合でMVPに輝いたのはピルロだったが、僕としては、この2本のシュートを超美技で防いだGKブッフォンを推したい。少なくともこのうちの1本が決まっていたら、試合の行方はどうなっていたか分からない。イタリアが焦ってプレイする時間が増えたことは確かだ。

 今、欧州を代表するGKといえばノイアーとカシージャスの名前がまず挙がる。ブッフォンの存在は、ともすると軽んじられがちだった。準決勝はそんな彼の意地を見た試合とも言い表せる。

 準決勝でノイアーに勝ったブッフォンは、決勝でカシージャスに勝てるか。イタリアがチャレンジャー精神をどれほど持てるか。勝負のポイントはここになる。

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