【EURO】スペイン三冠に王手も「ポルトガル戦はラッキーだった」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 原悦生●撮影 photo by Hara Etsuo

 それは、ハーフタイムを挟んでも変わることがなかった。

「90分間では、スペインよりも我々のほうがいいプレイをしていた」

 ポルトガルのパウロ・ベント監督が誇らしげに、そう振り返るのももっともだった。

 ところが、このままでは終わらないのが、王者の底力である。パウロ・ベント監督が続ける。

「(時間の経過とともに)スペインはどんどん強くなり、我々は効率性を失っていった。延長になると、我々の陣内でスペインにいいプレイをさせてしまった」

 とはいえ、スペインはうまくいかなかったパスワークを修正できたわけではない。選手間の距離は、特にピッチ中央部分で相変わらず遠く、パスをつないでフィニッシュまで持ち込むことはできずじまいだったのだ。

 そこでスペインのデルボスケ監督は、大胆な選手交代に打って出た。

「シャビのプレイが悪かったわけではないが、彼は疲れていた。ピッチ上には、もっとテンポが必要だった」

 百戦錬磨の指揮官は延長突入目前の87分、パスワークの中心にあり、スペインサッカーの象徴とでも言うべきシャビに代えて、ペドロを投入。サイドアタックの強化を図った。あえて言うなら、うまくいかないパスワークは捨て、ドリブル優先の攻撃に切り替えたわけだ。
 
 これで右にヘスス・ナバス(59分に交代出場)とアルベロア、左にペドロとジョルディ・アルバが配され、サイドからスピードあふれる縦への突破を展開。果たして、スペインの攻撃は格段にテンポアップし、迫力を増した。

 もちろん、結果としてゴールが生まれなかった以上、この策が完全に成功したとは言い切れない。それでも、スペインの攻撃がポルトガルに与える圧力は、試合序盤とは比べ物にならないものになっていた。苦心の打開策が、スペインを瀬戸際で踏みとどまらせ、PK戦勝利へと導いたと言ってもいいだろう。

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