【EURO】ウクライナ副首相「ファンはメディアにだまされたと言っている」 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

「そんなことが、こちらで起こるはずがない」と、コレスニコフは言う。彼が話すロシア語は、ウクライナ東部ドネツク地方の出身者の多くにとって第一言語だ。「しかし私たちは、ポーランドで起こった事件には非常に失望している。ポーランドのことはパートナーだと思っているからね」

 コレスニコフがウクライナでユーロ2012の運営を任されたのは、当然といえば当然だった。ビクトル・ヤヌコビッチ大統領の取り巻きの多くがそうであるように、彼の出身地はドネツクに近い。コレスニコフは食品や農産物の会社をいくつも経営しているばかりか、億万長者の友人リナト・アフメトフが所有するフットボールクラブ、シャフタル・ドネツクの副会長も務めている。コレスニコフのオフィスにも、シャフタルのチーム写真が飾られている。

 そんな彼も、今大会が始まる前に外国からこれほど批判を受けるとは思っていなかった。ドイツの首相アンゲラ・メルケルはウクライナを「独裁主義」と呼んだ。英BBCテレビの番組は、ウクライナとポーランドで人種差別的な暴力が広がっていると伝えた。

 コレスニコフは肩をすくめる。「この国に来たファンは、ヨーロッパのメディアにだまされたと言っている。ここには乱暴をはたらく者もいないし、人種差別をする者もいない。メディアはときに、主観的な意見を示すものだ。たとえばドイツの一部には、ウクライナの大会準備がうまくいかないことを期待する声があった。そうすればドイツが代わりに大会を開けるからだ」

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