【EURO】拙攻イタリア、「負の空気」を消したピルロの芸術的PKで準決勝進出

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 中島大介●撮影 photo by Nakashima Daisuke

PK戦までもつれた準々決勝。試合を制したのはイタリアだったPK戦までもつれた準々決勝。試合を制したのはイタリアだった
 PK戦というものは、得てしてそこに至るまでの試合の流れで優勢だったほうが負けてしまう。厳密にデータを集めれば、どんな結果になるかはともかく、印象としてはそうした傾向があるように思う。

 実際、試合内容で優勢だった、すなわち、より多くのチャンスを作りながら決勝点を奪えなかったチームのほうが、PK戦でより大きなプレッシャーを受けるのは確かだろう。押していたのに勝ち越せなかったという嫌なムードを引きずって、PK戦に入ることになるのだから仕方がない。

 だが、そんな"セオリー"が当てはまらない試合も、ときにはあるということだ。

 ユーロ2012準々決勝第4試合、イングランド対イタリアは、思いがけずイタリアが一方的にイングランドゴールを攻め立てる展開となった。

 思えば、キックオフからわずか4分にして、デロッシの豪快なミドルシュートがゴール左ポストを直撃したのが、イタリアの攻撃開始の合図だった。その後、15分あたりまでは、逆にイングランドがうまくパスをつないでいくつかのチャンスを作るという時間があったものの、その間を除けば、延長を含め、ほぼイタリアがボールを支配し続けた。

 とはいえ、得点するのは時間の問題だと思えるほど、イタリアが決定機を量産できていたわけでもない。

 むしろ一方的にボールを支配し、ほとんどの時間で敵陣に攻め込んでいたにしては、退屈な攻撃に終始していた感は否めない。

 気になったのは、ボールを受けるための動きの少なさだ。

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