【EURO】今やオランダより攻撃的。ドイツ、ギリシャを粉砕!

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 原壮史●写真 photo by Hara Masashi

 その6分後、ドイツはケディラのボレーシュートで再びリードしたが、そこまでの6分間の攻防こそが、この試合のハイライトだった。ギリシャは先制ゴー ルを奪われても、少しも焦る様子はなかったが、ふたたびリードを許すと、さすがに少しばかり意気消沈。相手ボールの時にサボる選手をちらほら見かけるようになった。その後、ドイツに連続ゴールを許してしまった原因だ。

 とはいえ1-4とされたあと、2-4に押し返したのは立派。スコア的にも大敗という感じはしない。次への自信に繋がる敗戦だったのではないか。0-2より2-4のほうが収穫は多い。僕はそう思う。

 試合後、ギリシャサポーターは、応援団席に向かって挨拶する自国の代表に惜しみない拍手を送っていたが、それは傷をなめ合うような低レベルのものではなかった。

 その満足度は、ドイツといい勝負なのではないだろうか。「美しい敗者」とは言い過ぎだが、ギリシャらしさだけは披露した。独特の匂いを十分アピールできたと思う。

 弱小ギリシャに2ゴールを奪われたとはいえ、ドイツにも悪い印象は抱かなかった。少なくとも4年前のユーロ、2年前のW杯より上昇している。特に攻撃はバラエティに富んでいる。両ウイングがワイドに広く開き、立体感のある奥行きの深い攻撃をした。典型的なクリスマスツリー型を描いていた10年ほど前とはもはや180度別のサッカーだ。

 守備的サッカーから攻撃サッカーへ。なにより見た目がパッとしている。短期間の間にここまで劇的な変化を遂げたチームも珍しい。隣国のライバル、攻撃サッカーを自負するオランダよりオランダ的。攻撃的といえる。そのうえバランスにも優れている。急傾斜のスタンドから、そのピッチに描かれるデザインを俯瞰で眺めると、それはよく分かる。

 今大会に出場している16チームの中で、ドイツはやはり総合力という点で最も高そうだ。それに加えてモチベーションも高い。この試合では、弱小ギリシャに最大限の抵抗を許したが、それはギリシャを讃えるべきで、ドイツ自身の問題にはあらず、だ。メンバーを入れ替えて臨んだことも原因ではない。

 準決勝の相手はイングランド対イタリアの勝者。ドイツ決勝進出の可能性は7割以上あると僕は思う。

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