【EURO】イングランド1位通過も、物議呼ぶ「疑惑のゴール」

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 原悦生●写真 photo by Hara Etsuo

 そして後半17分、「疑惑の」と言われても致し方ないシーンが生まれる。最終ラインからのカウンターは、左サイドのミレフスキーを経由し、最後はデビッチがゴール前でGKと1対1に。放ったシュートを、戻ったテリーが体を投げ出してかきだした。現場で見ている感覚では入っていた。映像を確認してもゴールラインを越えていた。その後しばらく、ブロヒン監督は抗議を続け、後半25分から出場したシェフチェンコも、試合終了の笛と共に主審に近づき、なにやら口にしていた。
 
 イングランドのホジソン監督は、その間の選手の精神状態について問われ、こう答えている。

「いい質問だ。ボールをテリーがかきだしたということが重要なのだ。我々はゴールラインに関するテクノロジーを持っていないし、スローモーションで見たとしても100パーセント確かではない。我々は何度もこの点で苦しめられてきたし、今日のケースでいえば、それが運であるならば、私たちはついていたということだ」

 今大会は、審判を3人ではなく5人に増員している。増員された2人は常にゴールラインを走っており、ゴールシーンに関しては言い訳がきかない。このことも物議をかもすだろう。
 
 試合はイングランドが1-0で辛勝。エースの復帰で攻撃のよりどころが戻ってきたことはポジティブに捉えられるが、堅守のように見えて、人数をかけてしか守れない守備に今後は苦しむことになるのではないか。

 そしてウクライナはこの試合でシェフチェンコが代表引退を明言している。

「我々のサポーターの前での最後の試合だと分かっていた。選手であれば皆が望む声援を得られて幸せだった。今後は若手にチャンスを与えたい」

 地元の大舞台でのラストマッチは理想的だが、最後までその表情が曇ったままだったのが印象的だった。

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