【EURO】クロアチアに辛勝も、明らかになったスペインの弱点

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

決勝ゴールをあげたヘスス・ナバス(左)と、喜ぶスペインの選手たち決勝ゴールをあげたヘスス・ナバス(左)と、喜ぶスペインの選手たち 後半13分、ラキティッチのヘディングシュートが決まっていれば......。その渾身のダイビングがGKカシージャスに防がれていなければ......。番狂わせは起きていたに違いない。

 センタリングを供給したのはモドリッチで、右サイドを突破し、スペインのディフェンスが整わぬうちにナイスボールを送球したのだが、惜しくもゴールはならなかった。

 スペインの両サイドはこの試合、常に不安定な状態にあった。3FW(左からイニエスタ、フェルナンド・トーレス、シルバ)が中央に集まる傾向が強く、両サイドバック(左ジョルディ・アルバ、右アルベロア)が通常より高い位置を取らないと、その攻撃は散発に終わる。ボール支配率も上がらない。スペインらしさは失われる。だから両サイドバックが高い位置を取りたい理由はわかるが、そこで攻守が切り替わり、相手ボールになると、かなり慌てふためくことになる。

「3バック」は、その両サイドを狙われやすい布陣だと言われているが、この実質「2バック」の布陣はそれ以上だ。後半13分のシーンも、モドリッチが右サイドで「2バック」のひとりであるセルヒオ・ラモスの裏を突いたことが、決定的なシーンを生む引き金になっていた。

 スペインは両翼の後方に存在する「脇」がきわめて甘いのだ。脇を甘くしながら、難易度の高いパスを回すので、俯瞰でその全体図を捉えると、かなり危なっかしく見える。前回のユーロ、2年前の南アW杯より、その傾向はいっそう顕著になっている。

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