【EURO】ノイアー、フンメルス...オランダを上回ったドイツ守備陣 (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 原悦生●写真 photo by Hara Etsuo

 だが、ふたを開けてみればフンメルスは2戦連続で先発出場。今大会では彼の出来が、チームを安定した戦いに導いている。初戦のポルトガル戦後には、指揮官だけでなく、「ヘディングで何回かピンチを救ってくれた」と、ノイアーも感謝の言葉を口にした。この日も後半29分にファン・ペルシーの独走を食い止めたように、ゴール前での体を張ったディフェンスが目立った。そればかりかボールを持つことができ、攻撃の起点となることも大きな強みになっている。

 フンメルスが所属するドルトムントは、サイドバックが参加した分厚い攻撃が売り。対戦した酒井高徳は、その戦術はフンメルスがいるからこそ可能なのだと見ていた。

「フンメルスが最終ラインをコントロールしている。そこに起点ができることもあって、サイドバックが何度も攻撃参加して負担があるように見えるけど、実は上下動の距離が少なくてすんでいる。それはフンメルスがいるからこそ。彼がいれば僕もあの中でできるかな、なんて思う(笑)」

 24分の先制点はフンメルスが起点となって生まれている。さらに後半7分にも、自陣からドリブルを始めると中央をするすると抜けて一気にゴール前まで運びシュートを放った。
「シュートもうまいしなんでもできるんですよね」と、かつて酒井が感嘆していたその技術は、ユーロという舞台でさらに輝きを増しているように見える。

 一方のオランダは、豪華攻撃陣が全く機能しなかった。連携プレイなど見当たらず、ファン・ペルシー、スナイデル、ロッベン、アフェライが、個の力でプレイするしかない。後半28分、かろうじて返したファン・ペルシーの1点も、ペナルティエリア外からのミドルシュート。ドイツの選手交代直後に、一瞬、隙ができたところを突いたに過ぎない。大会前から懸念されていた守備は案の定、連携ができていなかった。

 ファン・マルバイク監督は「スペースを与えすぎた。勇気がなかった」とその守備を表現した。マタイセンの先発復帰も実らず、いいところなし。グループリーグ敗退の危機が迫っている。

 実力伯仲で、"死のB組"とまで言われたが、ドイツの強さは際立っていた。

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