【EURO】04年ポルトガル対イングランド、混在するファンが美しかった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

PK戦でポルトガルの勝利が決まり、呆然とするベッカム(中央)らイングランドの選手たちPK戦でポルトガルの勝利が決まり、呆然とするベッカム(中央)らイングランドの選手たち思い出の名勝負(3)

 ポルトガルは2004年2月18日、 イングランドと親善試合を行なった。舞台はファロの「アルグラーベ」。欧州にあっては最も気候がいい場所だ。イングランドサポーターが大挙駆けつけたのも納得がいく。しかし地元民は迷惑顔で彼らを迎えたわけではなかった。むしろその逆。街の広場ではイングランドサポーターを歓迎するイベントが盛大に催された。

 聞けば、ポルトガルとイングランドは友好関係にあるのだという。ポルトガルは歴史的に、隣国スペインから侵略や迫害を受けてきた過去がある。そしてイングランドは、ポルトガルがその天敵から攻撃を仕掛られるたびに、海を渡りポルトガルに援軍を送ってきた。ポルトガルにとってイングランドは恩人。ポルトガル人はイングランド人を丁重に扱った。

 ポルトガルは、世界各地で迷惑がられるイングランドサポーターが、気がねなくくつろぐことができる数少ない場所。試合当日「アルグラーベ」を訪れた、一見、荒くれに見えるイングランドサポーターが、いつもの試合より穏やかそうに見えたのは気のせいではないと思う。

 ポルトガルは、およそ4ヵ月後に開幕するユーロ2004でもスペインと争うことになっていた。グループリーグで両国は同じ組に振り分けられていた。

 ポルトガル、スペイン両国は、大会の招致でもライバル争いを演じる関係にあった。

 スペイン有利。ポルトガル開催は多くの人の予想を覆(くつがえ)して決定した。そのこともあって、6月20日、グループリーグ第3戦、リスボンの「ジョゼ・アルバラーデ」で行なわれるスペイン対ポルトガルは、大会前からグループリーグ最大の一番として注目されていた。

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