【EURO】選手も国民も優勝を確信しているドイツの「唯一の不安」

  • 鈴木良平●解説 analysis by Suzuki Ryohei
  • photo by Getty Images

 近年のドイツ代表の顔となっているシュバインシュタイガーは、所属のバイエルンで昨年暮れに鎖骨を骨折。今年に入って復帰を果たすも、今度は足首のじん帯を痛めてしまったうえ、調子が上がらないまま臨んだチャンピオンズリーグ決勝戦では、自らがPKをミスして優勝を逃すという、精神的なダメージまで負ってしまったのだ。

 5月31日に行なわれたウォームアップ・マッチのイスラエル戦でも、メンバー全員が調子の良さを披露する中で、シュバイシュタイガーだけがベンチを温めていた。もしこのままコンディションが上がらず、ピッチ上の絶対的リーダーが2ボランチの一角に落ち着けないとなると、チーム全体の士気にかかわってくるかもしれない。

 サミ・ケディラとトニー・クロースが並ぶ2ボランチも悪くはないし、チームもキャプテンのフィリップ・ラームが引っ張っていくだろうが、ここ一番の勝負どころでは、シュバインシュタイガーの存在は欠かせないだけに、彼の動向が心配される。

 もうひとつ懸念されていた左サイドバックについては、ラームが左に回って、本来センターバックのジェローム・ボアテングか、ベネディクト・ヘベデスが右に入るというお馴染みの解決策があるため、それほどの問題にはならない。これにより、センターバックにはホルガー・バドシュトゥバーとペア・メルテザッカー(あるいはマッツ・フンメルス)が固定されるはずだ。

 一方、4-2-3-1を基本とするチーム最大のストロングポイントと評される、2列目の「3」の各ポジションには、他国がうらやむ豊富なタレントがひしめいている。

 トップ下は、チーム最大のキープレイヤー、メスト・エジルが万全のコンディションで攻撃の核となり、バックアップには香川真司の抜けた穴を埋めるべくドルトムントへの移籍が決定している、23歳のマルコ・ロイスが控える。

 エジルについては、レアル・マドリードにおける今季のパフォーマンスで証明される通り、2年前のW杯時よりも、フィジカルの強さと安定感が増し、もはやこのポジションでは世界指折りのレベルにある。また、ロイスの才能と可能性については、ドルトムントのフロントが香川放出に何のためらいも見せないことで、その実力は証明されている。今大会で出場機会があれば、2010年W杯のエジルのような衝撃を世界に与えるはずだ。

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