【EURO】88年、優勝国オランダよりすごい試合をしたチームがあった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 とはいえオランダの準決勝も楽ではなかった。ハンブルクの「フォルクスパークスタジアム」で、死闘と呼ぶに値する名勝負を演じていた。相手は地元西ドイツ。

 目を疑ったのは、スタンドの過半数がオレンジ色のファンで占められていたことだ。ハンブルクがオランダ国境に比較的近い街とはいえ、ホームは西ドイツ。開催国の威信を懸けて戦っている大国だ。隣国であり小国のオランダサポーターが、それを上回る勢いで乗り込んでいった。

 オランダにはその14年前。74年西ドイツW杯で開催国西ドイツと決勝を争い、1-2で敗れた過去があった。

 オランダ、ドイツ両国は、第二次世界大戦で被害を受けた国と与えた国の関係にある。オランダにとってドイツは憎き隣国。74年決勝は天敵を成敗するまたとない機会だった。戦前の下馬評でもトータルフットボールを掲げて戦うオランダ優位が伝えられていた。そこでまさかの敗戦を喫した。第二次世界大戦のリベンジに失敗した。
 
 オランダが88年欧州選手権準決勝にかける意気込みは、半端ではなかった。監督も74年W杯で指揮を執った名将ミホルス。舞台は万端整っていた。

 西ドイツがPKで先制すれば、オランダもPKで同点に追いつく。試合そのものも74年W杯決勝と瓜二つの展開だった。

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