【イングランド】選手年俸推定5位のアーセナルを3位に導いたベンゲル (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

 リバプールの悲惨なシーズンは、フットボール・ディレクターのダミアン・コモリが引き起こしたものだが、ケニー・ダルグリッシュにも同等の責任がある。ダルグリッシュは移籍について自分に最終決定権があったことを認めている。

「どの選手も、みんな私が連れてきた。間違いない」

 しかもコモリとは違い、ダルグリッシュにはチームをつくり、指揮する責任もあった。

 リバプールのファンは、現役時代のキャリアやクラブの「顔」という地位からダルグリッシュに大きな信頼を寄せているが、それは間違いだ。スポーツ経済学者のステファン・シマンスキーが分析した膨大なデータによれば、優れた選手と優れた監督の間には関連性がない。このふたつはまったく別の仕事だ。

 確かにダルグリッシュは、過去に監督として優れた手腕を示したことがある。しかしファーガソンやベンゲルとは違い、今はそれを示すことができていない。ダルグリッシュはリバプールが昨年1月にロイ・ホジソン(現イングランド代表監督)を就任から半年で電撃解任した後に監督になったが、ホジソンの解任はいささか急ぎすぎたようだ。

 今年2月、ファビオ・カペッロがイングランド代表監督を辞任したまさにその日に、ハリー・レドナップが脱税疑惑の裁判で無罪になり、ほとんどのメディアが彼を次期代表監督候補にまつり上げたのは、今思えばおかしな話だ。この少し前に、レドナップはトットナムが優勝すると宣言していた。「われわれにはチャンスがある。選手たちもやれると信じている」。しかしカペッロが辞任した日から、トットナムは下降線をたどりはじめ、最終的にはマンチェスター・シティに勝ち点で20ポイント差をつけられた。

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