【CL】バイエルンの敗因を分析。カギはメンバー交代にあり (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama
  • photo by Mutsu KAWAMORI/MUTSU FOTOGRAFIA

 気持ちは分かる。だが、この作戦は率直に言って古典的だ。繰り返すが、それまで試合を優勢に進めていたのはバイエルン。60対40の関係にあった。だが、守備固めに入れば、この関係は崩れる。その上、精神的にも後ろ向きになる。スタンドを埋めたバイエルンファンもその時、試合の行方に固唾(かたず)を呑んでいた。ファンもベンチも選手も、必要以上に硬くなっていた。

 後半43分、フアン・マタのふわりと浮いたCKが、バイエルンのゴール前を襲ったとき、守備の人数は十分足りていた。ゴール前はしっかり固められていた。だが、相手のポイントゲッターへのプレッシャーは十分ではなかった。ドログバの高い打点のヘディングを多くの選手が見てしまっていた。

 デジャブのように蘇(よみがえ)ったのは、いまから19年前の悪夢だ。

 このままタイムアップの笛を聞けば、W杯初出場が決まる----―そのロスタイムに浴びた、オムラム(イラク)のヘディングシュートだ。ドーハの悲劇の瞬間である。あのときの日本の守りと、今回のバイエルンの守りはかなり似ていた。ゴール前は十分な人で固められていた。が、守備者の足は動いていなかった。ボールウォッチャーになっていた。サポーターの様子も似ていた。応援を忘れ、そのCKの行方に固唾を呑んでいた。場のムードはそっくりだった。

 バイエルンは、繰り返すがその直前にわざわざ長身ディフェンダーを投入していた。にもかかわらず、ゴールをヘディングで破られた。ハインケスの戦術的交代は、全く功を奏さなかった。同点ゴールを奪われた瞬間から、むしろ逆効果になった。ゲームプランは空転した。守備的にシフトした布陣で、もう1点を狙いにいく必要が迫られた。

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