【五輪代表】日本のライバル、スペイン代表の強さを検証する (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

 さらには、オーバーエイジ枠の候補となる選手も、今回のEL決勝には出場していた。

 A・マドリードのアドリアンと、ビルバオのハビ・マルティネスはいずれも24歳で、昨年のU-21ヨーロッパ選手権(兼ロンドン五輪ヨーロッパ予選)に出場していた選手。アドリアンはエースストライカーとして、ハビ・マルティネスはキャプテンとして、チームの優勝に貢献した。

 予選と本大会で年齢制限が異なるという事情により、ロンドン五輪にはオーバーエイジ枠でしか出場できないが、見方を変えれば、予選の段階からオーバーエイジ枠を使ってチームを作っていたようなものである。24歳以上の選手が、すでにチームに馴染んでいるというメリットは大きい。

 EL決勝では、ハビ・マルティネスは守備で高い危機察知能力を見せると同時に、攻撃の組み立て役にもなっていた。また、アドリアンも、ファルカオ、ジエゴの陰に隠れてはいたが、随所にスピードを生かした鋭い突破を披露。A・マドリードのディエゴ・シメオネ監督が、「(2トップではなく)ファルカオの後ろにアドリアンを置いたことで、スペースを生かす戦術が成功した」と称えたほどだ。

 しかし、いかにレベルの高い選手が揃うとはいえ、所詮は(基本的に)23歳以下のチーム。当然、若さゆえの脆さはある。

 実際、EL決勝でもビルバオでアンカーを務めたイトゥラスペは、相手のコンパクトな守備に攻め手を見出せなかったし、ムニアインにしても、焦りから見え見えのスルーパスばかりを狙って、ボールを失うことが多かった。

 ただし、これは相手が経験豊富なA・マドリードだからこそ、起きたこと。経験値で劣る同年代の日本代表であれば、自分たちなりのやり方で彼らを封じなければならない。
 
 そこでカギとなりそうなのが、サイドでの攻防である。

 幸い日本は、左右に優れたサイドバックを擁している。右の酒井宏樹は、もはやJ1最高と言っていいサイドバックであり、左には現在、シュツットガルトで売り出し中の酒井高徳がいる。"ふたりの酒井"が積極的に攻撃に出ていくことによって、サイドでの攻防を優位に進めたい。「攻撃は最大の防御なり」というわけだ。

 裏を返せば、EL決勝の後半のように、デ・マルコスが左サイドバックの位置から何度もシュートチャンスに絡むようだと、日本の劣勢は免れない。

 酒井宏の攻め上がりで、左サイドのビルバオ・トリオの連携を分断する。そんな展開に持ち込めるならば、日本にとっては理想のシナリオである。

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