【ヨーロッパリーグ】「経験」のA・マドリード対「若さ」のビルバオ。勝敗を分けた攻撃の質の違い (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Getty Images

スペイン五輪代表選手も多い若きビルバオ。自分たちの力を発揮できずに悔しい結果となったスペイン五輪代表選手も多い若きビルバオ。自分たちの力を発揮できずに悔しい結果となった 若いビルバオに対し、A・マドリッドは一昨年にも同じ舞台に立ち、しかも優勝を経験。当時を知る選手が残っているうえに、エースストライカーのファルカオは昨年、ポルトの一員として同タイトルを手にしている。

 試合前日、「少しナーバスになっているが、決勝なのだから当然のこと」と言いつつ、「昨年の経験は特別なもの」だとしたファルカオ。ペナルティエリア内で見せた落ち着いた仕事ぶりは、まさに優勝請負人としてのそれだった。

 一方で、ビルバオの22歳、アンデル・エレーラは「確かに、経験は重要。だが、我々も自分たちのチームに自信を持っている。いつものスタイルで戦う」と、堂々と話していた。

 そして、事実、いつも通りに戦い、ボール支配率では圧倒した。だが、A・マドリッドのコンパクトな守備に対し、ほとんど最終ラインを突破することはできず、時間の経過とともに「らしさ」を失っていった。

「A・マドリッドは8回のチャンスで3ゴール。我々は9回のチャンスを作ったが、ノーゴールだった」

 そう言って、ビエルサ監督は強がって見せたが、3点差での敗戦という結果には、「やれると期待していたことと、実際に起きたこととの間には大きな差があった」と嘆くしかなかった。

 悪い意味での若さを露呈する結果となったビルバオとは対照的に、A・マドリッドには、勢い込んで攻撃に出てくる相手を巧みにいなす余裕があった。

 奪われたボールを高い位置からすぐに奪い返しに来るビルバオの戦術を逆手に取り、A・マドリッドはボールを奪うと、横パスやバックパスで逃げずに、むしろ積極的にボールを前へ運んだ。これによってボール支配率で下回り、守備に追われる時間が長くなる試合のなかでも、常に主導権を握ることができた。

 たとえ、数のうえではビルバオのほうが多くのチャンスを作っていたとしても、よりゴールの可能性を感じさせる"濃度の高いチャンス"を作っていたのは、A・マドリッドのほうだった。

 マン・オブ・ザ・マッチのトロフィーを手に、ファルカオが笑顔で話す。

「シーズンには浮き沈みがあって難しい時期もあったが、最高の結果で締め括ることができた」

 ヒーローの言葉どおり、注目のスペイン決戦は、A・マドリッドの完勝で幕を閉じた。

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