【ドイツ】過熱する現地メディアによる香川真司去就報道の背景

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

「難しいですね。日本のメディアが騒がなければラクなんだけど」

 4月末に結論を出すのか?
 
「それに今、答える必要はないと思う。しっかり考えたい。日本の報道が過剰でちょっとショック」
 
 試合の前日27日、ルールナハリヒテン紙は、香川の代理人であるトーマス・クロートの「期限なんてない。我々はいい話し合いをもっている」と、返答期限の存在を否定する発言を掲載した。香川側からのいわば応戦だ。

 試合をまたいで29日、衛星放送スカイのサッカー番組で、ツォルクSDが「香川に契約延長の意志はない」と語った。これに各紙が食いついていっせいに報道がなされている。
 
  結局のところ、現在までほとんどの報道は、ビルト紙かキッカー誌がドルトムント幹部のコメントを元に(独自の情報がある可能性もあるが)騒ぎ立てている印象だ。クラブ側が早期決断を迫るのも心情的に理解できる。ただ、移籍先が早期に決まるとも思えず、香川側がじっくりと検討しているとみるほうが自然だろう。

 とはいえ、この週末にはブレーメンのトップ下、香川に近いタイプのマルコマリンのチェルシー移籍が静かに発表されている。このことを考えると、なぜこんなにもドルトムントと香川の周囲ばかりが騒がしいのか不思議になる。ドイツメディアには、ドルトムントが提示した300万ユーロが、他の同程度の選手に比べて安すぎるのではないかと見る向きもある。時間をかけて金額をつり上げていると言うのだ。

 C大阪時代からの流れを見ても、香川自身に移籍願望があるのは明らかだ。今年に入り「タイミングを間違えないようにしたい」と話していた、そのタイミングが今だと思っていることも各種の発言から察しがつく。ただ、そこから先はまだ分からない。ドイツメディアも何もつかんでいないから、ドルトムント幹部のコメントばかりが紙面に踊っているのだ。

 ほぼ毎試合、試合後に香川からの電話を受けるという細貝萌は、「今後の話も彼とはする。彼の望むようにことが運べば、と願っている」と話す。我々はしばらく静観するしかなさそうだ。

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