【スペイン】バルセロナに地元育ちの選手が多い本当の理由 (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

6 ボール支配はゲームの9割

 ボールをキープしつづけることは、クライフ時代からバルセロナの重要な戦術だ。たいていのチームはボール支配率を重視しない。いくら支配率で上回っても負ける場合があることを知っているからだ。しかしバルセロナは、65~70%の支配率をめざしている。昨シーズンのリーグ戦では平均で72%を超えていた。今シーズンも約70%の支配率をあげている。

 支配率を高くする理由はふたつある。まず、こちらがボールを持っていれば、相手は点を取れない。バルセロナのようにタックルの得意な選手が多くないチームは、ボールを支配することで「守備」をする必要がある。ボールを持っていないときのバルセロナは「ひどい」チームだと、グアルディオラは言う。

 第二に、バルサがボールを支配していれば、相手チームはボールを追って体力を使う。たとえボールを奪い返しても、疲労がたまっていれば、またすぐに失ってしまう。ボールを支配すれば、バルサにとってはいいことづくめなのだ。

 バルサはボール支配にこだわっているから、ジェラール・ピケのようなDFも大きなクリアはせず、自陣のペナルティエリアの中でさえ細かいパスを出す。たいていのチームでは、少なくともGKは大きなクリアを許されている。イングランド代表でも、ジョー・ハートはたいてい適当に大きく蹴っている。これがイングランドの弱点なのだが、GKはパスを出せないから仕方がないとイングランド人は思っているようだ。バルセロナの考え方は違う。

 バルサのライバルであるレアル・マドリードの監督ジョゼ・モウリーニョは、パスに対するバルサのこだわりを分析してきた。昨年12月にサンチャゴ・ベルナベウで対戦したときには、レアルの攻撃陣がキックオフ直後からバルサのGKビクトル・バルデスを追い詰めた。彼がクリアをしないことを知っていたからだ。バルデスのパスミスがもとになって、カリム・ベンゼマが試合開始から23秒でゴールをあげた。それでもバルデスはパスを出しつづけ、最後にはバルサが3-1で勝った。バルセロナ育ちのGKは、エドウィン・ファン・デルサールのようなアヤックス育ちに似て、フィールドプレイヤーと同じようにボールを扱える。

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