【イングランド】カペッロの後任にはどんな幸福と災厄が降りかかるのか (3ページ目)

  • マーク・バーク●文 text by Mark Burke 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

 それがイングランド。希望の国……のはずだけれど、ワールドカップは46年前に取ったきりだ。フットボールの母国……なのだけれど、世界に羽ばたいていったフットボールは「親」への敬意などとっくの昔に忘れている。

 そんなとんでもない期待とプレッシャーが、ひとりの人物にのしかかる。元イングランド代表監督のグレアム・テイラーは、まったくもって「まとも」な人物だが、監督のときに「猟犬」にかじられた傷をいまだに背負っている。彼は今、メディアで余生を送っている。自分の肉をかじり取った猟犬とともに過ごしているということだ。

 猟犬のほうは、テイラーににこやかに接する。「やあグレアム! 今日もよろしく。いつものようにうまくやろう!」。テイラーはほほ笑んでうなずく。だが、あの頃の痛みはまだ心と体の深くにうずいている。国中が自分の首を欲しがったような、あの暗い日々がフラッシュバックする。

 政府の人間だったら、仕事を辞めればみんな自分のことを忘れてくれる。BBCには誰も名前を知らないようなお偉いさんがたくさんいる。王族は遠くから見られているだけで、問題を起こせば人々は眉をひそめるだろうが、最後には許される。

 しかし、イングランド代表監督は?

 代表監督の成功と失敗は彼の墓場まで、いやその先までつきまとう。なんとも「ヤバい」仕事である。なり手は少ない。しかし、やはり断りきれない魅力だけはあるらしい。

【プロフィール】
マーク・バーク
1969年、イングランド生まれの元サッカー選手。アストン・ビラ、ミドルズブラ、ウルバーハンプトン、フォルトゥナ・シッタート(オランダ)、大宮アルディージャなどでプレイ。現役引退後、ライターとして活躍

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