【イタリア】限られた出場時間でキャプテンシー発揮、デル・ピエロの勇姿をこの目に (2ページ目)

  • 内海浩子●文 text by Uchiumi Hiroko
  • photo by Maurizio Borsari/AFLO

 今季を最後にユーベを去る。37歳という年齢もある。だがクオリティーはチームメートに優るとも劣らないし、第一、彼はビアンコネーリのバンディエーラ(象徴)だ。もう少しきちんと起用されてもいいだろうと"他人"ですら思うのだから、当人の胸中、推して知るべし、だ。

 だが、それがたとえ正当なエゴであろうとも、感情的言動を引き金として得られる一過性の自己満足が、真の幸福を台無しにすることがある。彼が描いているその幸福とは、キャプテンとしてスクデットとコッパ・イタリアを掲げ、勝者として白と黒のユニフォームを脱ぐことかもしれない。スタメンで出るとか、より多くの試合に出るための自己主張は、グループの輪を乱しかねない。つまり目先の喜びは得られたとしても、最終目標のためには百害あって一利なしだ。

 とはいえ、頭でわかっていても、実行し続けるのは容易ではないはずだ。有名人に対する挑発やそそのかしは古今東西変わらないが、イタリアにおいてサッカー選手に対するそれは相当なものだからだ。その中で理性を保つとなると、これもひとつの非凡な才能と言えるくらいである。

 だからこそ彼の"行動しない行動"には、今までデル・ピエロを特にサポートしていなかった人々や他チームのファンすら一目を置く。そしてユーベのティフォージは自分たちのバンディエーラをあらためて尊敬し、愛する。

 新トッティがいないように、新デル・ピエロはいない。ユベントスはジャンピエロ・ボニペルティに次ぐ真のバンディエーラ、つまりアレッサンドロ・デル・ピエロと出会うまで30年以上の月日を擁した。あと2ヵ月間、ユベンティーノとしての彼の姿をしっかりと見つめていきたい。

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