高校サッカー夏のインターハイ総括。前橋育英、帝京、昌平ほか、冬の選手権で伸びてくるチームはどこか? (2ページ目)

  • 松尾祐希●取材・文・写真
  • text&photo by Matsuo Yuki

守備陣に成長が見られた帝京

 一方、準優勝を果たした帝京は、今大会を通じて最も力をつけたチームと言える。もともと下馬評は高く、今年の3年生は入学当初から黄金世代と言われていた面々だ。

 今大会は、破竹の勢いで激戦区を登りきった。2回戦では青森山田(青森県)に1点ビハインドから2発を叩き込んで逆転勝利し、準決勝では昌平(埼玉県)を1-0で下すなど、優勝候補を軒並み撃破。一戦ごとに自信を深め、19年ぶりにファイナルの舞台へと進んだ。

 テクニックに定評がある主将の伊藤聡太(3年)、プロ注目のストライカー・齊藤慈斗(3年)といった攻撃陣のタレントに目が行きがちだが、今夏の収穫は守備陣の成長だろう。大会序盤は相手の勢いに飲まれ、短時間に連続失点するケースも珍しくなかったが、準決勝では今大会屈指の攻撃力を持つ昌平を零封。決勝でもGK川瀬隼慎(2年)、センターバック(CB)大田知輝(3年)を軸に守り、前橋育英をギリギリまで追い詰めた。

 日比威監督も準決勝後に「体を張って守っていた。(昌平に対して)2点ぐらいとられてもおかしくなかったけど、体を投げ出してよくやってくれたと思う」と振り返り、守備陣の奮戦ぶりに目を細めた。

 しかも、今大会はコンディションが万全ではなかったCB藤本優翔(3年)など守備陣のレギュラー格が数名不在。彼らが本来の姿を取り戻せば、冬に向けて上積みが見込める。ポジション争いもさらに激化するだけに、守りがさらによくなる可能性を秘めている。

 2018年度以来のベスト4入りを果たした昌平も、今夏に評価を高めたチームのひとつだ。今年の3年生はチームの育成組織にあたるジュニアユースチーム、FCラヴィーダでプレーしていた選手がほとんど。しかも中学3年時に、クラブユースU-15選手権で初出場ながらベスト8に入った世代だ。

 この埼玉の強豪は、FC東京入団内定ですでにルヴァンカップでJデビューを果たしているドリブラーのMF荒井悠汰(3年)らが順調に成長を遂げ、春先から期待が高まっていた。プリンスリーグ関東1部でもJリーグチームを抑えて首位を快走。

 今大会も安定した戦いを見せ、攻撃陣が大会序盤から爆発。毎試合のように複数得点を奪い、日章学園(宮崎県)との3回戦では1-2と逆転を許した状況下で後半のクーリングブレイク直後に畳み掛けて5ゴールを奪って勝利を手繰り寄せた。

 守備陣も、キャプテンのCB津久井佳祐(3年)とU-17日本代表候補のCB石川穂高(2年)を軸に身体を張った守りを披露。準々決勝の大津(熊本県)戦ではGK上林真斗(3年)が好セーブを見せ、期待に応えた。

 準決勝では帝京に敗れたが、昌平も冬に期待できるのは間違いない。ただ、不安材料は守備陣の再編だ。準々決勝の前半に津久井が右足首を脱臼し、外側の靭帯を断裂する大ケガを負ってしまった。3番手のCB今井大翔(3年)も負傷で今大会に出場できておらず、当面の起用は難しい。今大会はCB佐怒賀大門(2年)が津久井の穴を埋めるべく奮闘したが、初の全国制覇を見据えるのであれば選手層の拡充、底上げが急務になるはずだ。

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