横浜F・マリノスが天王山で完勝。「宮市のために」結束したチームの勢いはさらに加速 (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「宮市の話をすると感情的になってしまう」

 背番号17のユニフォームを身にまとい、試合後の記者会見に臨んだマスカット監督もそう語っていたように、本人はもちろんのこと、チームに与えたショックも決して小さなものではなかったに違いない。

 しかし、指揮官はこんな話を続ける。

「宮市が(代表から)帰ってきた時、個人的にも長い話をしたが、話し始めて2、3分後、彼は自分のことではなく、チームのことを考えていた。走ったり、ピッチに立ったりすることはできないが、ピッチの外からできることは最大限やると言ってくれた。悔しい思いをしたと思うが、今はチームのことだけを考えて行動している。そんな彼がチームメイトにいることを、クラブとしても誇りに思うべきだ」

 宮市の気持ちを痛いほどに理解するチームメイトたちが、これに何も感じなかったはずがない。

 ケガをした宮市から引退も考えたという話を聞き、「かける言葉を見つけるのも難しかった」と振り返る岩田は、言葉に力を込める。

「亮くんのために(持っている力を)出しきって、どんな形でもいいから勝つことだけを考えていた。それができてよかった」

 すでに手術をすることが決まっている宮市が、今季中に復帰することはまず不可能。横浜FMは貴重な戦力を欠いたまま、今季の残り試合を戦うことになるだろう。

 しかしだからこそ、水沼は決意の言葉を口にする。

「勝ち続けて、優勝して、アイツにカップを掲げさせる。大事な仲間のためにやりたいと思う」

 思いの乗ったチームは強い。優勝しなければならない理由ができた今、横浜FMはさらに強さを増すはずである。

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