「オールドルーキーのリアル」を元サッカー日本代表・坪井慶介が語る。「この先どうなるのかという不安はすごくあった」 (3ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

解説業をようやく楽しめるようになった

――引退後に仕事をしていくなかで、一般的なスキルの部分で困ったことはありました?

「やっぱりパソコンですね。解説の準備をする時もメモは手書き派です(笑)。選手時代は映像をiPadやPCで見るぐらいはありましたけど、仕事のやりとりをPCでするなんてまずないですからね。映像の編集スキルなんて当然ないし、文字を打ち込むのだってドラマの新町さんのように異常に遅いです(笑)。でもそういうことにも順応していかなければいけないですよね」

――解説業などメディアに出る仕事をメインに活動されていますが、選手時代とは違う現場に戸惑いなどはありませんでしたか?

「解説やリポーターなどをやる時に、選手としていろんな経験をしてきているので緊張には強いほうだと思ったんですけど、現場で生中継で流れるとなった時に頭が真っ白になったことがありますね(笑)。立場が変わって言葉でなにかを伝えなきゃいけないとなって『こんなにも緊張するんだ』というのを最初のほうに経験できたのは大きかったですね」

――中継での解説ではどんな準備をされていますか?

「選手の背景や前所属など、そういったことは実況の方がやってくれるので、各選手がどういったプレーをし、どんな特徴があるかは最低限勉強しておく必要がありますね。例えば過去3試合はさかのぼって、それが両クラブなので1度の中継の準備として最低限6試合は見ています。この準備の部分が一番大変だと思いますけど、それは現役の頃も同じですね。長くサッカーを続けるなかで、試合に対しての練習、準備、その後のケアをしっかりやり続けることがいい結果を生むし、長く続ける秘訣だと思っています」

――解説業は楽しめていますか?

「最近はようやく楽しめるようになってきましたね。今だから言えますけど、引退後すぐに解説の仕事が来た時は『無理、無理、俺には解説なんて無理だから』と言っていたんですよ(笑)」

――そうだったんですね(笑)。実際、最初の解説はどうだったんですか?

「まず声が小さい。マイクの感覚がわからなくて、あまり大きな声で話すと試合の邪魔になってしまうんじゃないかとか考えてしまって、小さめの声になっていたんですよ。あと気を使って『あ、今しゃべらないほうがいいかも』と思って逆にしゃべらなすぎて、実況の方が話を振ってくれないとあまり話さない感じでしたね(笑)」

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