「オールドルーキーのリアル」を元サッカー日本代表・坪井慶介が語る。「この先どうなるのかという不安はすごくあった」 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

この先どうなってしまうんだろうという不安

――退団リリース時にサポーターやクラブにメッセージを残すことがありますが、その時も複雑な思いを抱えているものですか?

「浦和や湘南でもそうでしたけど、行った先のクラブで骨を埋める思いでやってきたので、それが叶わなかったという切なさや悲しさ、複雑な思いはありましたね。とくに湘南ではJ2から昇格して、来季はまたJ1で自分の力を証明しようと思っていたところで契約満了をいただいて、もうJ1は厳しいのかと。自分があの舞台に立つことはもうないんだろうなと思った時、すごく寂しさを感じました。本当にオールドルーキーの世界ですね(笑)」

――そういった時、坪井さんにとって代理人はどんな存在でした?

「自分ではわからないことや客観的な意見を教えてくれる貴重な存在で、すごく感謝していましたね。湘南や山口へ移籍する際もクラブに提示された厳しい評価を代理人から事前に聞いていて、現実的に受け入れなければいけないと話してくれていました。クラブとの交渉だけでなく、そういったことも代理人の大きな役割でした」

――仕事とはいえ、選手に一番伝えづらいところですよね。

「そうですね。自分では納得するパフォーマンスをしているのに年俸が上がらない、評価されない。つい『なんでだよ!』と思う時にも、私の代理人は『クラブの評価はそうじゃないんだよ』と率直に伝えてくれる人で、それは30代後半からのサッカー人生、人間形成において本当に助けになりましたね」

――セカンドキャリアのスタートはどうだったんですか?

「引退後、一旦サッカーの現場からは離れることは決めていました。ただ、すぐにコロナ禍になって全然仕事がない時期がありました。だからこの先どうなってしまうんだろうという不安はすごくありましたね。

 そのなかでもずっと考えていたのは、どんな仕事でも前向きに取り組もうということ。引退してから1年目の意識でいたので、どんな仕事でも一生懸命コツコツと積み重ねていく。やるべきことを全力で、謙虚に取り組んでいく。そこは、プロサッカー選手になった当初の初心と変わらないと思っていました。それがあったから、セカンドキャリアにもスムーズに入っていけたと思います」

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